とはいえ内容は、ジャコフリークにとっては最後まで一瞬たりとも目が離せない。ちょっと左手が細かく震えてたりして、この頃から既にアル中の片鱗が!?などと気になるが、さすがウェザー時代のジャコ、指はとにかく良く動いている。ジャコのおなじみ手癖スケールたちを中心に29の譜例が紹介されるが、天才といえどもその素晴しいプレイは膨大な練習量に裏打ちされたものなのだ、ということが見てて良く分かるのは新鮮な驚き。ジョンスコ/ケンウッド・デナードとのトリオもゴキゲン。
ジャコなので当たり前だが、エクササイズの内容は初心者向けではない。しかし真剣にスケールをプレイする、動くジャコを見られるだけで‥‥あと何を望もう。おお神よ。
付属の譜例集にはジャコ(orマーク・イーガン?)が書いたとおぼしき解説が個々に付いていて(勿論英語)、これもまた興味深い。
全体としては、ジェリー・ジェモットという黒人ベーシストがインタヴュアーとなり対話形式で進んでいく。
(トレーシーの肖像を思い出しながら弾くジャコの姿は少し悲しい。絶頂時はこんなものでは無い!......
でもこのビデオのプレイでも十分凄い)
おかげでこうしてファンはジャコの音楽的アプローチやテクニック、トレーニング方法を見る事が出来る。
ジャコが存在しなかったら、現在のModern Electric Bassは今と違ったものにきっとなっており、
聞き手が質の高いプロミュージシャンでベーシストである事が幸いし幅広くジャコのアプローチが網羅された
内容になっている。従って資料的価値の高いビデオである。
この撮影のため、当時浮浪者と化していたジャコを3日間ホテルに酒なしで缶詰にしたらしく、ここに現れるジャコは凄くマトモだ(インタビューの途中でかなりくたびれてしまっているが)。手もよく動いている。ただ最盛期のような「スピード」や「魔力」はないので逆にプレイを落ち着いて見ることができる。いいような悪いような・・・。
この作品は教則ビデオとかではもはやない。「トレイシーの肖像」は思わず声が出てしまった!そしてジョン・スコとウッディとのジャム!超恰好いいです!・・・・合掌。