考えてみれば、無意識に誰もが始終やっていることだった。もっとも大抵は、都合の良い、手近な答えでお茶を濁し、日常の雑事の中に逃げ込んでしまうわけだが。
そんな「堪え性のない人々」に本書が指し示したのが、国内外の「粘り強く批評し続けた先人たち」、B・バルトーク、G・ギッシング、花田清輝、S・ソンタグ、J・グルニエ、S・ボーヴォワール、山下洋輔、黒澤明、A・ジャコメッティ、澁澤龍彦、F・カフカ、サン=テグジュペリ、W・ベンヤミンら51人が著した51編のアンソロジーである。
それぞれの批評精神を読み解き、そこで得た答えをさらに独自の批評へと発展させていく。そんななかで「高校生にはうまく立ち回って点をかせぐ“学力”よりも、“生き方を支える力”を身につけてもらいたい」というのが編者たちの願いだ。大人たちも遅くはない、今から始めよう。「批評の門」はいつでも開け放たれているのだから。(中山来太郎)