戦争中日本軍のスパイとして働いてた主人公桐三五が戦争後もイヌとしてでしか生きられず再び闇の世界に戻っていくみたいな話。
かつて天才漫画家石ノ森章太郎先生は何でも描けるからこその萬（よろず）画家といってたけどそのとうり本人や手塚先生らはあらゆるジャンルの漫画を描いていた。しかし一つ一つのジャンルについての情報がありまくりの今現在色んな種類の漫画を描ける人はかなり少ないと思われます。
そんな中この漫画の作者細野不二彦先生は相当数のジャンルの作品を描いている数少ない漫画家です。
しかもボクシングから絵画、妖怪や探偵など専門知識がかなり必要な題材をいつも原作なしで描いてます。
個人的に昔からすごい漫画家やなあとおもってました。
もちろんそれぞれが面白い。
頭が下がります。

　何年か前、本屋でこの本を見つけたとき頭に雷を落とされたような感覚に陥りました。その時は思い違いかもしれないと思い、買うのをやめ、しばらくしてから入手することに。しかし、内容は良い意味で期待を裏切ってくれました。まず、敗戦直後の日本がどの様な状態にあったか克明に描かれている事、そして当時の社会が抱えていた暗部をこれでもかという風に読者の前にさらけ出していること、最後に主人公、桐三吾優しさと強さを併せ持っているという事でしょう。
　私はこれを読む度に、レイモンド・チャンドラーの産み出した私立探偵フィリップ・マーローを思い出します。彼は言います、「男は強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格が無い」と…。桐三吾もきっとそうなんでしょう。

わたしにはちょっと内容がハードすぎましたが、男性の方は好きかもしれません。

細野氏の漫画は「生き様」にポリシーをもった主人公が多いですね。
そして、それが格好いい。
これまでも結構グロイ内容の作品がありますが、おそらくこれが一番でしょう。
元兵隊の戦後の話です。戦争、そして戦後のアメリカ統治下の日本。
その時代を体験していないわたしたちには、重い、重い話ですね。

でもカバー裏には笑いました。
実際使ってみたらどうでしょうか？本棚的に。