キングダム・カム(限定特別価格)
価格: ¥321
キャリアを終わらせる駄作だとはちらりとも思わないが、不安定な『Kingdom Come』はジェイ・Zが引退を終わらせることにする最適な理由にはなっていない。業界に舞い戻ってくる彼の熱意がこのアルバムにさぞかしエネルギーを注いでいるとファンは思うことだろうが、CDの冒頭を飾るジャスト・ブレイズによる強力な3曲があるにも関わらず、アルバムの大半は気力がなく集中力に欠けているように感じられ、ドクター・ドーレやネプチューンズといった一流プロデューサーたちも実に生温い一部の曲で大失敗していてどうしようもない。所々にいい瞬間もある。激烈なタイトル・ソング「Lost Ones」でジェイのソウルが剥きだしになるところや、「Dig a Hole」の冷笑だ。だがこうした瞬間はぱっとしない「Beach Chair」(コールドプレイのクリス・マーティンのプロデュース)や鼻持ちならない企業の闊歩「30 Something」、そしてけばけばしく、聞くに耐えないクラブ向きの曲「Anything」で相殺されてしまう。この10年に及ぶジェイのファンならば、彼の実力はこんなものでないことをよく知っている。だから、ジェイの本当のカムバックのアルバムがあらたな期待となるだろう。--Oliver Wang