アルバム『Human』は、ウィリアム・ブレイクの詩集『Songs of Innocence and Experience（無垢と経験のうた）』にインスピレーションを得たもので、自伝といっていい内容だ。ガンジス川と生死のサイクルを示唆する「The River」で始まり、苦労の多かった英国での生い立ちが続く。イーノック・パウェルのスピーチや、運動場での肉体的な体験を通じ、そして教師からさえも、彼は人種差別を受けていたのだ（教師のひとりは、国民戦線のメンバーだった）。やがて幻滅が訪れたとき、詩人の厳しい英知が彼を豊かにし、新しい楽観が生まれた。

   アルバムはこの過程を、フラメンコからエレクトロカータまで、さまざまな音楽スタイルのモザイクで追っていく（ソーニーは、ただ生来的に一緒にならないものもあることに言及して、“フュージョン”という言葉を嘆く）。だが、『Human』は黙想するアルバムだ。それはこちらに飛び込んでこず、こちらから近寄ることを要する。それでもハイライトとなる曲は隠されていて、「Rainfall」（スティーヴィー・ワンダーを思わせる）や古代ラーガ「Heer」の孤独な音色が、感動を呼ぶ。（David Stubbs, Amazon.co.uk）