で、この作品が注目なのは、もしかしてあの作家では? と思わせる女性作家が作品の中に登場するから。生活にだらしがなくて、話をすればひどく俗っぽくて、兄弟と住んでいる、と言えば???
作者はそのいわくありげな作家について卒論を書こうとする女子学生で、ひょんなことからその作家本人のことを知ってしまい……という展開。しかしそれは文学とは何か?という真摯な問いかけから生まれた設定でもあって、文学とはようするに知らず知らずのうちに感染しちゃうものだ、ってことが書かれているのかもしれない。舞台となっている下北沢の町の描写がじつは一番魅力的だったりする。おすすめ。