DSPの『理論』にはふれず、『応用(実践)』の核になる部分が学べる、ということになっているが、それには多少無理があるかもしれない。本文中にしばしば出てくる、わかりやすくするため、または親しみやすくするため(?)の『例え』や漫画風のイラストの多用は、逆に回りくどく、読みにくくしていると感じた(大学生以上にこういうイラストは必要ないでしょう?)。
出版側の意向として仕方のないことかもしれないが、C6211DSKとC5402DSKの二つの異なるDSKを対象としているため、半分とはいわないまでも重複する内容のページが多いのも減点。
しかし、DSP と MPU/CPU の違いを明確に示した方がいいのではないでしょうか?
本書を用いて、プロセッサデバイスを初めて学ぶ学生にとっては、それが(例えば、割り込み処理とか、条件分岐、サブルーチンコール等)、DSP 固有の技術のなのか、MPU/CPU にも共通な技術なのか判断出来ず、将来混乱を招く可能性があります。
言い替えるならば、本書が DSP 固有の技術について深く掘り下げてあるならば、理系の大学生、大学院生、また、現役のエンジニア、プログラマーが読んでも得るものがあるでしょう。少しでも MPU/CPU の経験のあるエンジニア、プログラマーにとって、本書の 9 割は復習となってしまいます。
この辺は、続編に期待します。