やっぱり面白い。
★★★★★
大学はどこ?と聞かれて咄嗟に答えられない、そんな思いをした事のある人は大勢おられるでしょう。そういった平均的な若者像を描いた傑作だと思います。中井貴一、時任三郎、柳沢慎吾の3人に被せられた典型タイプのどこかに自分を見出すでしょう。彼らが女子大生と知り合うのに、同好会を作りますが今なら合コンになるのでしょうか。それ位の違いはあるかもしれませんが、変わらぬ大学生たちの姿が描かれていると思われます。セリフにしても改めて見て本当にどこかで聞いたフレーズが随所に嵌め込まれています。大学生活は、社会に巣立つ前のモラトリアム期間のように見えます。親に育てられていた時間が終わりを告げ、大人の世界が扉を開くのが、平均的な若者にとっては、大学の頃に当たるのでしょう。山田太一さんの作品は、誰もが経験のありそうなエピソードを使って、日常の平衡感覚を疑わせるスリルがあって非常に面白いです。中井貴一さんと小林薫さんの兄弟の組み合わせ、国弘富之さんと高橋ひとみさんの怪しい関係など絶妙なキャスティングも見事だと思います。