カラヤンは、その栄光と名声に満ちた人生のなかで、生涯自らの「美意識」をひたすら追求した。同時に、常に新しいメディアを開拓し、その力を最大限に活用することにも余念がなかった。そのため、得意とするレパートリーは一定の間隔をおいて何度も繰り返しレコ―ディングし、ベートーヴェンの作品もモノラル時代から数多くの録音が残されている。
この『運命』『田園』のカップリング盤は、デジタル録音によるカラヤン最後の全集となった演奏で、基本的なスタイルはまさにカラヤン流とでも呼ぶべき洗練されて流麗な表現となっている。同時に、一方で彼の芸術の到達点を示す名演といえよう。(奈良与志雄)