奇妙でユニセックス的なスティーヴン・パトリック・モリッシーは、痛ましくも誠実な歌詞――控え目な態度で、ほとんど戸惑っていると言ってもいい――に、小憎らしいユーモアと憂鬱さを結びつけた。そのモリッシーをフロントマンとするこの英国のバンドは、ジャーニーやREOスピードワゴンといった肥大化した横暴なバンドがまだ登場していたアメリカの音楽シーンにとって、まったく異質の存在だった。
英国盤が1984年、米国盤が1993年にリリースされた本作には、シングル曲とさまざまなラジオ番組用に録音された多数のライヴテイクが収録されている。大半の曲は、さらに分厚くなったヴァージョンがコンピレーション盤『Louder Than Bombs』に収められているが、スタジオテイクのみを収録したどこか味気ない『Louder Than Bombs』にはない活気がここには満ちている。それを確かめたいなら、やるせない「Back to the Old House」でのジョニー・マーの繊細なアコースティックギターや、今やクラシックの「This Charming Man」「Still Ill」などのさらにくつろいだトラックに耳を傾けるといい。
また、他のアルバムには未収録の2曲「Handsome Devil」「Accept Yourself」があるために、本作はファンにとってマストアイテムとなっている。軽快で小うるさい「Accept Yourself」でモリッシーは、「他のみんなは愛を克服したけれど、ぼくは逃げた/部屋にこもって、計画を練ったんだ」と言い聞かせるように優しく歌っている。ここにあるのは、リスナーの心のなかに住む不器用な子どもにうってつけの音楽だ。(Steve Landau, Amazon.com)