アフリカに集中する破綻国家の歴史
★★★★☆
冷戦時代には世界中に壁が設けられ、国内でどれほど残虐な行為がなされても当事国の主権を尊重する、不介入の原則が貫かれました。しかし冷戦終結で世界中の壁が取り除かれ、所謂破綻国家の末期症状が次々に白日の下に晒され始めた今では、破綻国家の病状を理解し、内政に介入しなければ、悪癖も世界全体に波及するものと言えます。
身近にも北朝鮮などの破綻国家はありますが、他の地域と比べ破綻国家が突出かつ集中しているのは、やはりアフリカでしょう。本書では、アフリカの各国で建国以来続けられた、内戦の歴史が描かれています。中でも病理が際立つのは、コンゴ民主共和国。モブツによる終身独裁制、カタンガやカサイの分離主義、残虐で無秩序な国軍、シンバの反乱等で顕著なカルトイデオロギー、ベルギー人やフランス人の傭兵、さらにはルワンダを始めとする周辺国の紛争までが波及して、コンゴは八つ裂きにされ、国としての機能を失った状態です。カビラ政権に代わっても内情はほとんど改善されませんが、破綻国家で生じる問題の根本的解決がなされず、指導者の首のすげ替えだけに終始する限り、国家が国民のために機能する結果にはならないでしょう。
コンゴ以外にも、民族対立からリビアとの関係を巡る対立に変遷したチャド内戦等、日本人に馴染みの薄い国に関しても内戦の詳細な歴史が理解できますが、登場する人名が多すぎて何度も読み返さないと人物間の関係を理解できず、また各国の章の冒頭に国の地図すら記載していない等、読者に対する工夫がなされていません。また、植民地を脱した後なぜアジア諸国で成功が見られ、アフリカで破綻国家が集中しているのか等に関する、考察は本書からは得られません。以上のような難点はありますが、アフリカの歴史に関する知識を深め、現在進行形の破綻国家の病状を知る上で、本書は貴重な1冊です。