健康的な色気とエスプリの饗宴
★★★★☆
オッフェンバックの喜歌劇は、もっともっと皆さんに広く親しんでもらい作品群であると私は日ごろから思っています。この『美しきエレーヌ』にしても、次々と流れてくる楽しく美しい旋律の数々や、色彩感あふれるオーケストレーションなど、文句なしに楽しめる超一級の作品といえるでしょう。ただ、この作品の場合は、パロディーの元になっているギリシャ神話のエピソード自体がいささか込み入ったストーリーである上、このディスクの上演ではさらに現代的な風刺やユーモアを取り混ぜてしまっているため、あらかじめ添付の解説書を読んである程度の背景知識を得ておかないと、充分には楽しみにくい、という難点はあるかもしれません。演出については、健康的でありながら結構露骨なお色気の表現などが随所に見られますが、それらも単なる悪ふざけや嫌味にはなっておらず、いかにもフランス的エスプリを感じさせてくれて、むしろ好感が持てます。主役のロットをはじめとして、出演者やオーケストラの演奏レベルはきわめて高く、それもこの上演があくまで上品さを失わずにすんでいる理由のひとつになっています。