全体は5部に分かれており、それぞれの部で幾何学に目覚ましい変化を与えた人物を中心に据えている。すなわち、ユークリッド、デカルト、ガウス、アインシュタイン、ウィッテンが主人公。扱う内容で言えば、平面幾何学(幾何学と論証)、解析幾何学、微分幾何学、一般相対論、超ひも理論の解説になっている。ウィッテンについては馴染みのない人もいるだろう。彼は1990年に京都で開かれた国際数学者会議で数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞した人で、いずれはノーベル物理学賞も取るだろうと言われている研究者だ。
すべての解説において、主人公に関すること以外の歴史的な事実や登場人物の特徴、さまざまなエピソードを適切に取り入れていて、描かれている時代の様子を想像しながら、飽きることなく読み進んでいける。著者の略歴を見ると、カリフォルニア工科大学の教授からサイエンス番組の脚本家になったとあるが、その実力は存分に示されていると思う。翻訳も丁寧で正確なので安心して読める。(村藤一雅)