すばらしすぎる
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このオペラは、若いときから、大好きでしたが、今度のレコーディングが決定盤になりそうです。概して、タチアーナのソプラノ歌手は、スラブ系の歌手の場合、声が太く、重く、中域以下の音域ではまるでメゾかアルトが歌っているような気がして、とても恋に恋する若い娘の声にはにつかわしくなかった。長い間決定盤といわれていた、ヴィシネフスカヤ盤もその例外ではなかった。それが、雲行きがかわったのが、ショルティ盤でテレサ・クビアクというソプラノがタチアーナを歌っていて、やっとまともになった。その後、フレーニが挑戦したときは、肝心の指揮がレヴァインで、熱っぽすぎて、抒情性が損なわれていました。
しかし、今度のフレミングの歌唱には、参ってしました。以前はベルカントのオペラしか歌っていなかったのに、このタチアーナは奇跡としかいいようがない。見事にリリコかつドラマティコの歌を聞かせてくれます。もちろん、ほかのキャストにまったくあらがない。舞台も適度に美しく、ゲルギエフの指揮はでしゃばらず、歌唱中心に展開していきますね。
おそらく、この曲の決定盤の地位はとうぶん揺るがないことでしょう。
本当に美しくて劇的
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ロシア語のオペラは今までまったく手を出したことがありませんでしたが、
ホロストフスキーに惹かれて買ってみることにしました。
まずは舞台に感動です。
一幕は枯れ葉を舞台一面に広げ、反響盤が囲むだけで舞台セットはまったくなし、
場面場面に応じて最小限の大道具・小道具があるのみです。
その分、衣裳は本当にゴージャスに作られていて、
観衆一人一人のイマジネーションをかき立ててくれます。
光の扱いも巧く、シルエットも含めて、効果的な光の演出が活かされています。
普段なら幕が閉まってオーケストラだけの演奏であるのであろう曲も、
ホロストフスキーを中心に無言劇が演じられ、これもまた情緒に富んだものです。
特に2幕・3幕をつなぐポロネーズは、あまりオペラには例のない手法です。
そしてお目当てのホロストフスキーは、
もうこのプロダクションはこの人のために作られたのではないかと思うくらい。
歌声も凛々しくて素晴らしいですし、感情表現も本当に豊かです。
なんせ立ち姿の美しいこと。この作品のホロストフスキーは必見です。
そしてフレミングもまた素晴らしい。あの細い体のどこからこの声が出るの
と思われるくらいに安定度のある美しく張りのある声には感動です。
以前ヴェルディの作品で見たときはこれほど感銘を受けなかったけど、
この作品はこの人の歌唱に本当に合っているんだなぁと感じました。
最終幕のこの二人の二重唱は、ただ綺麗なだけでなく、
とても力のある迫力のある歌唱で、このオペラを劇的に盛り上げます。
劇的なだけでなく、切なさも深々と感じさせるところに
この二人の歌手・演技者という二役の技術の高さを感じさせます。
ゲルギエフの指揮もたくさん映されていて、
この作品にかける思い入れがジンジンと伝わってきますし、
バルガスを始めとする歌手たちもとても満足度の高い歌唱です。
しばらくこの深い感動は残りそうです。