「ADHDを引き受けて立ち向かう」では、親が積極的に専門家の知識を利用し、子どもの責任者としていかにあるべきかを説く。ただでさえ、子どもの扱いに悩みながら生活しているのに「親のしつけが悪いから」などと責められる親たちのために、親自身のケアの必要性を力説する。家庭や学校ですぐに実践できる対処法は、第3部の「ADHDの子供との毎日」に詳しい。的確な対処によって、問題をかかえる子どもたちの健康的な発育を促すこともできるのだ。
日本版刊行にあたり、ADHD関係者の支援団体代表者へのインタビューを加え、日本の現状をより詳しく解説している。アメリカで使われている薬が、日本では認可されていないという例もあり、治療や対処法を議論するだけでなく、行政への理解を求める必要もあるようだ。
巻末では、日本国内でADHDの治療を実践している医療機関、支援団体、教育関係の相談窓口の連絡先や参考文献も紹介。ADHDの子どもとかかわる人たちの役に立ちたい、と願う著者や編者の気配りが随所に見られる。(齋藤聡海)