アンセム (CCCD)
価格: ¥2,800
レコード会社を移籍しての第1作。寺井尚子は2002年6月からピアノの北島直樹やギターの細野義彦を含むニュー・クインテットで活動しており、これはその新バンドの最初のアルバムでもある。スタンダードは2曲だけ、あとはメンバーのオリジナルを演奏している。とはいえ、どの曲もメロディがチャーミングとあって、その演奏は非常に親しみやすい。本人の曲は2曲、対して北島の曲は5曲。それに関して尋ねたら、「北島さんの曲が多いのは、それだけ彼の曲がよかったから。それをどう料理するかが大事で、別に自分の曲でなくても構わない」と言っていた。彼女はまた、「このメンバーだとすごく自由になれる。信頼感というか、この人たちがいるだけでとても安心できる」とも語っていた。たしかに、これまで以上にバンド・サウンドを感じさせる作品だ。ヴァイオリンの音が素晴らしいのはいつものことながら、太くて密度の濃い音、潤いがあって豊かな音にすっかり魅了される。これぞまさしくヴァイオリンならではの官能的なジャズ。(市川正二)