『Empire: How Britain Made the Modern World』の著者でもあるファーガソンは本書のなかで、アメリカ帝国が物や労働力、資本の自由な取引を積極的に担うリベラルなものであるかぎりは、何ら異議を唱えるつもりはないと述べている。さらに、「感染症を封じ込め、専制君主を退け、地域紛争を終結させ、テロ組織を根絶する」ための手段として、「21世紀にはいままで以上に帝国が必要になる」とも。こうした役割や行動を、アメリカができるだけ早い時期に自信をもって担えるようになることが好ましい、という。
ファーガソンは、アメリカの根強い反帝国主義的衝動と大英帝国の姿勢とを対比させたうえで、自由社会、民主主義、開発、自由市場の世界的拡大というアメリカの掲げる外交政策を実現したいのであれば、大英帝国のような模範からもっと多くを学ぶべきだと主張している。また、真の変化を望むのなら、紛争地域に資金や民間人、軍隊を長期にわたって送るべきだとも述べている。第2次大戦後の日本やドイツではそうした戦略がとられていたのだが、現在のアメリカ国民や指導者の大多数にとっては、それは嫌悪すべき戦略なのである。資金や人員を限定的につぎ込んで、錯綜した責務を大急ぎで達成しようと奮闘するよりも、完全なアメリカ化が実現するまでは、外国文化に自らをすすんで融合させていくべきだ、とファーガソンは述べている。
本書は全編をつうじて、アメリカの抱える独特なジレンマと、それが世界全体に与える影響を鋭く検証している。(Shawn Carkonen, Amazon.com)