とりあげられた話題のなかには、過去の作品やエッセイですでに言及のあるものがありますが、新たな発見もあり興味深く読みました。なお掲載順でなく、テーマごとにまとめられています。
収録エッセイのうち、「戦争論」では小林の『戦争論』を読み、意外なことに、戦前の勇ましい雰囲気を味あわせてもらって、とても楽しかったと述べています。しかし筆者は、戦後の対外的なペコペコ国となった日本を「それでいいのだ」と肯定します。筆者は『戦争論』を読んで、日本人としての自尊心をくすぐられて懐かしかったそうですが、勇ましさの代価を知る一人として、なんだか(兵隊となって)輸送船に乗せられるような気分になったとのべています。この回は雑誌掲載時に読んだのですが、「輸送船」という単語が印象に強く残っていて、本作というと私はこのエピソードを思い出します。
私は水木しげるの戦争もの・戦争体験記ものが好きなのであるが、やはり兵隊時代が特におもしろかった。人の生死の分かれ目というのはほんとうに不可思議なものである。また、最後の方に小林よしのりの戦争論についてのコミックエッセイで、水木先生がどのように感じているのかが伝った。その表現もやはり水木テイストである。戦争経験をこのように表現できる水木しげるの才能はすばらしいと思う