下町歩きのベストガイドブック
★★★★★
東京都台東区、荒川区、文京区の入り交じるあたり。下町の風情の残る一帯は谷中、根津、千駄木。略して「谷根千(やねせん)」という。関東大震災、太平洋戦争の戦災から生き残った町並みを愛でる人の町歩き散歩コースともなっている。かくいう私も、江戸っ子でもないのに一度足を踏み入れて懐かしい気持ちにとらわれてしまった。さて、こうなると適当なガイドブックが欲しくなる。きれいなビジュアルの豊富なガイドブックも出ているらしいが、じっくり読めるものが欲しいと思って探していて発見したのがこの本。キレ味の良さを感じさせる知的な文章なのに、なぜか暖かみと優しさにあふれているのは著者の人柄か、素材がそうさせるのか。読んでいて飽きない。どこからでも、気に入った章を行き当たりばったりにめくるのもいい。ふらふらと目的も無しに歩く町歩きのように。すると、ピカソやミロが愛用した筆を作る筆屋さんにあたったりする。