静学分析マクロ経済学テキストの最高峰
★★★★★
マクロ経済学の基本となる様々なモデルが学べる優れたテキストである。
他の本には見られないくらいきっちりとした解析を行っており、やや数式が煩雑になってしまってる印象があるが、使われる数学としてはラグランジュ乗数、行列式、クラメールの公式くらいであるので、学部上級のマクロテキストとしては十分な内容である。
(ただし第5章のリアルビジネス・サイクルでは、横断条件などの動学的最適化理論や、計量のラグ演算子などが若干使われているが、適当な参考文献でその都度調べればよいくらいで、たいした問題ではない。)
この本の特徴として挙げられのが、国際マクロの充実さであろう。全11章の内、4章分に国際マクロの解説が載せられてある。
具体的には(タイトルではない)、第8章マンデルフレミング、第9章マンデルフレミングモデルにおける対外資産導入のマクロ経済政策、第10章マンデルの2国モデルへの拡張、第11章国際政策協調のゲーム論的分析、である。9~11はテキストに載せる題材としては珍しい内容であり、この本にオリジナル性を与えているだろう。
その代わり、成長理論が一切ないので個別に学習しないといけない(成長理論知らずしてマクロ経済学は語れないからだ)。
同様な趣向(静学分析が中心)で書かれたテキストとして想起させられるのが、武隈「マクロ経済学の基礎理論」である。この本も素晴らしいテキストであるが、個人的には嶋村マクロを推薦したい。武隈と同様に、この本にもほとんどのマクロテキストに見られるケーススタディ的な実証研究や現実的応用例の話題は一切ないが、理論やモデルを学習するならこちらの方が充実した内容であった。
難癖をつけるなら、高すぎかと…(いい本であるのにもったいない)。