著者自身がウエストポイントを卒業し、民間企業のエグゼクティブとして働いた経験を持つため、ウエストポイントのリーダーシップ論がうまくビジネスの実務レベルに落とし込まれている。ウエストポイント除隊後に実業界で活躍したリーダーたちへの調査結果から導き出された「リーダーシップに関する8つの普遍法則」は特に注目で、簡潔ながら重要なリーダーの条件について書かれている。
おもしろいのは、著者が「リーダーシップを学習によって身につけることができる」と主張していることである。著者によると、努力すればカリスマ性さえも身につけるのは不可能ではなく、本書にはその学習のためのポイントが示されている。確かに実例として登場するリーダーたちは多種多様で、素行や人間性に問題のあった人物もいた。それだけに著者の主張が説得力を持って響いてくる。ナポレオンからワシントン、フィオリーナ、シュルツまで、古今を問わずさまざまなリーダーたちの例を引用しており、これらを読むだけでも価値がある。またリーダーシップに関する古典にも言及しているので、当該分野の研究者にとっても有益な1冊といえるだろう。(土井英司)