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ベックリーン「死の島」―自己の英雄視と西洋文化の最後の調べ (作品とコンテクスト)

価格: ¥814
カテゴリ: 単行本
ブランド: 三元社
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ベックリン「死の島」 ★★★☆☆
ベックリーン“死の島”―自己の英雄視と西洋文化の最後の調べ (作品とコンテクスト)
さる6月、ライプツィッヒの美術館でベックリンの「死の島」を観たが、想像していたより明るい色調で、やや意外であった。そこで調べてみようと思い検索をかけたが、和書ではこの本にあたった。字が小さく読みにくく、カラー図版も少なく美術書としては不満であったが、ベックリンはほぼ同じ構図で「死の島」を5つ画いていることがわかった。ライプティッヒの絵は、感じたとおり他のものより明るいとのこと。ヒットラーが居室にかざっていたそうである。確かにナチズムやヒットラーの感性には死のにおいがする。
歴史意識の強い良シリーズ ★★★★☆
ベックリーンは19世紀末のドイツ象徴主義を代表する画家である。彼の作品はメランコリックな画家の多いドイツ人の中でも、鑑賞者を陰鬱とさせるものが多い。《死の島》もその典型的な一作であろう。入るものを拒む絶壁の島。なぜに彼はこんなにも絶望しているのか。その背景を歴史的な文脈から読み解いていくのが本書である。ベックリーン研究としては別段珍しいものではないだろうが、よくまとめられていておもしろい。ベックリーン自体の知名度が低いので、入門書としてもありなのではないか。

私がベックリーンに大変な興味を覚えるのは、彼は基本的な部分ですごくフリードリヒに似ているのにもかかわらず、結果として表現したものが全く違うからだ。確かにフリードリヒの絵も一見して暗いが、フリードリヒの作品には必ず希望がある。ベックリーンにはない。圧倒的絶望がこの《死の島》には表現されている。また両者はフランス嫌いで共通し理性を倦んだが、フリードリヒは北方を志向したのに対し、ベックリーンは南方を志向した。その違いを生んでしまったものは何か。多くを占めるのはもちろん歴史的な事情であろう。19世紀の最初と最後では、一体何がどれだけ違ったのか。逆に変わらなかったものは何か。そういったものがこの比較から見えてくるはずだ。

ところでこれは『フリードリヒ【氷海】』と同シリーズの、ドイツのタッシェンが出している「作品とコンテクスト」シリーズの一冊である。このシリーズはおもしろい作品を取り上げるので好きなのだが、なぜだか薄い割に高い。もう少し安ければ、揃えてみようという気も起きるのだが。もしくは大判にするとか。