こどもという存在。
★★★★☆
空々しく寒々しい物語。最後が明確にならない奇妙さと自由。
子供はなんでも信じたがるし否定したがるし我儘で残酷である。
母に守られ人形と常に机の下に隠れるロビン、おまじないや実験に終始するアリス姉妹、自分勝手な教師との狭間で悩むブレンダ、読めないラテン語の古本を購入し何かにつけ難癖をつけるアントニー、騒々しくでたらめなバートン家、原作から逸脱したオリジナルの『三匹のこぶた』を祖母に話すウィリアム、うそつきの友人がいるがために辞典に心酔するピーター、自分を強い人間だと信じたがるゴードン、柱に名前をつけるリビー。
それぞれが、かわいらしく、コミカルで、ぞっとする。
こわいね。
★★★☆☆
「こわいものなんて何もない」なんてタイトルなのに、怖かったです。特に怖かったのが、「ウィリアム版『三匹のこぶた』」。ウィリアムはまだ本も読めない小さな男の子。妊娠したお母さんが検診のため病院に行ってる1時間、おばあちゃんに三匹のこぶたの話をしてもらう。その話に難癖をつけるウィリアム。「母さん豚は買い物に行ったんじゃないよ、殺されてベーコンになったんだよ」「朝ごはんになったんだ」「豚には名前なんかないよ」、そんな話の間に、母親と生まれてくる赤ん坊のことをおばあちゃんに聞くウィリアムに、漠然とした不安を感じました。
はっきり見えないものって、怖いですよね(ちなみに、私は芥川龍之介の「藪の中」で、泣きそうなほど怖がったクチです。)。この中の九つの話はどれも、明確なオチや結論が導き出されないまま、ぼんやりと不透明にだけど何か含ませてを終わります。全部が全部、怖いものじゃないんだけど、不安にさせられる話のほうが多かったです。
具体的に恐ろしいものを書かずに、これだけ不安にさせるこの本は、すごい本だと思います。が、好きか嫌いかの好みの点で言うと、それほど好きではないということで、星は三つ(単純明快な話が好きなの)。本そのものの評価ならもっと高いです。
カワイイ子供たち。
★★★★★
この短編集に出てくる子供たちはみんな、変。でも、どの子もリアルな子供らしさがあり、そしてなにより可愛らしい。
ユーモア溢れる文章は読みやすく、思わずニヤっとさせられる。そして奇妙だけど穏やかな雰囲気は、心を柔らかくしてくれる。
子供から見た場合と大人が見た場合で感想がまるで違ってきそうな、不思議な本。