存在意義の再検討を
★★☆☆☆
Sシリーズ商法三部作のコンセプトは、
『読者の「なぜ」「どうして」に答えること』なのだそうです。
では、本書がそれを達成できているかといえば、
私が読んだ限りではかなり疑問の残るものでした。
確かに、制度趣旨に関する記述は随所に見られますが、
それは教科書としてはある意味当然なことであって、
特筆しているほど噛み砕いて書いてあるようには思えません。
逆に、このコンパクトな中に相当な知識をできる限り
詰め込もうとしているため、非常に無味乾燥な記述が目立ちます。
条文の羅列が1〜2頁にわたって淡々と続くところもあります。
法律学は条文が命とはいえ、本書のような入門書としては、
思い切った条文の取捨選択がなされてもいいのではないでしょうか。
神田教授や近藤教授の単著、あるいは他の先生による
わかりやすい入門書が多くある中、本書を購入する必要性は
ほとんどないといわざるを得ません。
司法試験の基本書として最適
★★★★★
実務について10年近くたつが、ここ数年会社法の改正が立て続けにされているおり、またアメリカに来て日本法の知識がやや薄らいできたため、久しぶりに「基本書」といわれるものを通読してみた。私が受験生のころには会社法の全体像を答案に書ける形でコンパクトにまとめているものといったら、鈴木・会社法(弘文堂)ぐらいしかなく、これを前田・入門(有斐閣)で補足して勉強していたが、このSシリーズの本は、前田・入門よりもある意味では鈴木・会社法を正統に引き継ぎ、会社法の全体像のような総論的な部分も答案にすぐに書ける形でコンパクトにまとめられている。もちろん最近の会社法の改正までフォローしており、これ1冊あれば司法試験に必要十分な知識は得られよう。コンパクトで通読にも時間を取らないので、近時の改正までまとめて総復習したい実務家にももちろん大変便利な本である。