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Dusklands

価格: ¥1,266
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Vintage Books
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デビュー作 ★★★★★
南アのノーベル文学賞作家クッツェーの作品の中で、レヴュアーは、本書と『夷狄を待ちながら』が大好きです。個人的な趣味ですが。
本書は彼のデビュー作。34歳の時に発表されました。「ヴェトナム計画」「ヤコブス・クッツェーの物語」の二部構成になっており、前者はヴェトナム戦争中のアメリカが舞台。ケネディ戦略研究所の神話作製部門の研究員ユージン・ドーンが記した手記と対ヴェトナム情報戦略の論文の引用から成っています。ユージン・ドーンは、上司のクッツェーとの微妙な対立を抱えながら、仕事を進めて行く内に神経衰弱にかかり、次第に正気を失い、最後には職場を放棄し子供を連れて家出し、捕まり、精神病院に収容されるに至る。
第二部は十八世紀後半のアフリカ植民の物語で、ヤコブス・クッツェーという人の遠征の手記という形になっています。狡猾で油断のならないネイティヴのホッテントットたちとの交流から些細な事に起因する決裂。そして、それに対する大規模で残虐な復讐。ここで書かれている内容は「クッツェー」の名を軸に第一部と微妙な対応を見せ、互いの記述は互いの世界に深い奥行きを持たせています。
この作品の根底に西欧の植民計画に対する批判があることは間違いありませんが、作者はそれをあくまで中性的に描きます。特に、第二部における、近代的ヒューマニズムとは一線を画す独特の人間描写は目を引きますが、ラス・カサス等の異国の占領破壊を告発した古典作品を下敷きに、植民者の側からネガティヴに捉え直したためとも推察できます。ところどころ見られる矛盾する描写も、実験的な意図と、保存の良くない手稿に依っているという設定が交錯しているようにも感じます。ただの想像ですけどね。