インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)

価格: ¥842
カテゴリ: 新書
ブランド: NHK出版
Amazon.co.jpで確認
見えないものの具現化 ★★★★★
事前に基礎知識は必要そう。
でもキリスト教にかかわるほかでは余りお目にかかれないような内容。
読書の価値がある。
見えるものが重視される世界にあって見えないものの重要性、
またキリスト者に対する謙虚さの欠如への反省と具現化の必然性に強く納得
左巻も必ず読む。

P68 何のために神学を勉強し、何のために知識をつけるのか?
これは救済のため。
救済が必要ないとか、わたしは今のままで満ち足りているとか、死は怖くないということは、哲学者キルケゴールが言うところの「非本来的絶望」絶望的な状況にあってもそれに気づいていないという最低のカテゴリーの絶望。

P241 目に見えるものが重視される現代。ただキリスト教の考え方でも目に見えないものは具体的な形に受肉されていないと、意味が無い。友情、愛情しかり。だからこそ、類比という考え方が重要。類比とは、人間と周囲の関係性の問題であり、世俗化した時代に人間に養成される倫理の問題。受肉論もしかり

P244 元ソ連兵に対しアフガンで捕虜にされると手足切断目をくり貫かれる。そのため仲間でも救えない場合はヘリで皆殺しに。
優:それは状況倫理として認められる。
元兵はヘリで掃討作成を展開したのはどうか?
優:『僕は現場にいなかったからなんともいえない。その現場の具体的な状況を離れて、状況倫理について論じても意味が無い。』

P245 受肉によって全ては個別的な出来事になっている。個別的な出来事には必ず差異がある。そこで、自分とはことなるものをいかに認めるかという、寛容・非寛容の問題とつながる。類型的な見方とは多元主義なので、必然的に寛容性が出てくる。それに対して、具体的な実態から離れたところに抽象的な絶対の真理を立てることはキリスト教では禁じられます。絶対の真理は神にしか立てられません。超越的なる物は神によってのみ根拠づけられるから。宗教としてのキリスト教は自己絶対化の傾向がどうしても強くなってしまいます。しかしカールバルトがいうように絶対的なのは神だけです。人間が神の場に自分を置くことはありえません

繰り返しますが、われわれは個別具体的な状況の中で、そのつど倫理的な判断を迫られる。キリスト教がわれわれに課す倫理とは、もし二つの可能性があるならより苦しいものを選べということです。それは、一世紀にナザレのイエスがそのような選択をしたことに対する関係の類比だからです。

関係の類比⇔存在の類比:避妊禁止、自然の秩序を動かしてはいけない。
神学は知の訓練になる ★★★★☆
佐藤優の二つのバックボーンである、大学で専攻した神学と、職業として従事した外交のうち、後者についてはこれまで散々書かれてきた。本書では筆者のより深いところにある前者の世界へ進んでいく。難しそうだけど、いよいよ来たか、という期待を持って手に取った一冊。

筆者は冒頭で、まず近代知を相対化する。近代人は目に見える世界のみを語り、見えない世界を語らない。結果として、宗教のようなものに対するニーズが随所に噴き出してくる。なぜか、それは人間は常に死から逃れられないから、と筆者は明快である。

そこから宗教論が展開されるのだが、満遍なく主要宗教について議論するのではなくて、本書はあくまでキリスト教神学の入門書。キリスト教は一神教で信仰としては単純なものと考えていたけれど、神学としては千年以上の蓄積があり、本書レベルでも相当難しい。普遍とか類比とか受肉とか、主要なロジックに触れることができたらそれで良しと満足しなければならない。難しいけど、熱のこもった筆致は相変わらずで、面白く一気に読むことができた。

ヨーロッパの頭のいい人たちが、何でこんなことを数百年も考え抜いてきたのか、それって本当に救済のためなのか・・・と正直疑問にも思うが、西洋で近代知を構築していく前提として、このような宗教神学の訓練があったことは間違いないと思う。スタンスは違えど東洋にも仏教、儒教、道教の蓄積があり、対比的、批判的に読んでいくのも面白そうだ。神学は知の訓練になり、佐藤優はやる気を奮い起こしてくれる。次刊が楽しみ。
よく生きるための宗教を学ぶための入門書 ★★★★★
「宗教」は、「近づくと危険なもの」として、これまで避けてきました。しかし、この本では宗教は「見えない世界(たとえば、死)」からの救済を行うもの、とされています。それであれば、私も宗教を持っています。そして、自分自身がよりよく生きていくために宗教を学ぶことが有用であることが分かりました。

宗教の定義をした上で、本書は、神学のかなり本質的と思われる論点について、佐藤優ならではの知識と経験をもとにした事例を交えながら、語られていきます。論点は難解なのですが、事例がきわめて興味深いものばかりなので、面白く読み進むことができました。

面白かった事例は、朝鮮とキリスト教との関わり、人はパンのみに生くるにあらずの本当の意味(ググっても、本当の意味は出てきません)、オーメンの666の意味、等々です。

また、本書が入門書として優れているのは、巻末に、これから更に勉強していくための書籍一覧が掲載されていることです。ここでは、神学の世界だけにとらわれることなく、近代の本質や、倫理についてなど、幅広く教養が身に付く本が紹介されています。

本書は、自分自身がよりよく生きていくための知識を得ることができる良書です。
(by JIN@<おとなの社会科>)
実世界に影響する「見えない世界」の入場券を得る為の良書 ★★★★★
佐藤さんは「今世界の秩序は変わろうとし、鳩山も殆どの日本人も気づいていない。重要なことは見えない世界で起こり、見えない世界が現下の日本を動かしている。国際政治等の見える事象を理解するには同時進行の見えない世界に対する感覚を研ぎ澄ます必要があり、宗教を考えることで見えない世界への入場券が得られる。現下必要なのは人間が生きていく上での新たなる認識(命)のフレームだ」と説きます。

見える世界と見えない世界。神の世界とこの世の世界。村上春樹氏の1Q84のテーマでもあり本書と時代のシンクロニシティを感じますが、本書には以下の特徴があり、佐藤さんの解説を手がかりに宗教について自分で考え、見えない世界への気づきを与えてくれる良書です。

・キリスト教(カトリック・プロテスタント・正教)やユダヤ教の教義や成り立ち、ギリシア哲学とキリスト教の関係、4つの福音書の差異、パウロ(サウロ)の言行、中世の神学の意義、宗教改革、近代の神学(宗教論)、推薦できる聖書等々がプロテスタントである佐藤さんの目を通して解説されている。
・宗教を考える上で参考となる著書50冊がほぼ解説付で紹介されている。


しかし、本書は一体誰を読者として想定しているのだろう。 ★★★☆☆
 本書は、多くの日本人が不案内なキリスト教の神学的議論の若干立ち入った紹介を行うという体裁をとる。多少ものを知った読書人ならば、トレルチやバルトなら名前くらい聞いたことがあるだろうが、ゼーベルクやニーバーやゴーガルテンやユンゲルなんて教義学者や神学者を知る機会などないだろうから、こういう人達の議論を一般の読書界に紹介すると言う点では、本書は大変目新しい。

 一般の読者にとっての本書の価値はその細部にあるだろう。チュチェ思想とキリスト教の教義との関係の深さ、キリスト教の諸集団ごとの言葉遣いの違い(例えば「三位一体論」と「三一論」)、聖書の翻訳をめぐるあれこれ(「共同訳」「新共同訳」「新改訳」それぞれの成立事情と特徴)、かつての東ドイツの教会の状態などは、読んでいて啓発されたり、事実の確認ができたりして役に立つところが多い。

 又、本書に散見されるたとえ話の中で、著者は「新左翼の革マル派と中核派の関係」をもとにしてキリスト教とユダヤ教の断絶を論じてみたり、「関係の類比」と部落解放の神学を論じてみたりと、ある特定の世代にとっては大変わかり易い叙述を心がけているようだ(これ自体が類比的思考の良い例になるだろう)。しかし、その反面、若い世代にはかえってこういうところがピンと来ないのではないだろうか(しかし、つくづくこの人――或いは、この本の編集者――は、オヤジ殺しだなあと思う)。

 だが、彼らの神学的議論をキリスト者でもない我々がフォローする必要は一体どこにあるのだろうか。「コルプス・クリスチアヌム」とか「ポスト・コンスタンティヌス体制」とか、正直実感が湧かないと思う。多くの日本人にとってはどうでも良い議論なのではなかろうか。しかし、このようなキリスト教の教義を前提として欧米では政治論や歴史論が展開されてきたということの事実に我々があまりに無知であったことを考えれば、本書の啓蒙的なメリットは大きい(キリスト教の教義が西洋世界の思考枠を大きく規定してきたことについてその歴史的な経緯を知りたければ、ハロルド・バーマンやピエール・ルジャンドルの仕事を参照されたい)。

 プロテスタントの立場から見た神学の啓蒙書として、コンパクトではあるし、大変叙述が解りやすい。ただし、これで網羅的にキリスト教のことが判るなどと思われては困る。神学への取っかかりとしては良いかも知れないが、本格的に学びたければ――トマスやバルトを読めとは言わないが――J.ペリカンや著者も勧めるA.マクグラスの本を読んだ方がよほど勉強になる。著者本人が「実用書」と言っているのは、要するに一つのブックガイドとして有用だという訳である(こういう事を言うのは野暮か)。

 という訳で、星三つ。