政治思想史を論ずる上で必須のタームを説明する良書
★★★★☆
本書は「まえがき」にあるように,立憲主義,功利主義,自然法など,近代政治を語る上で欠かせない「政治的諸概念」の「ライフタイム」について記述している.つまり,ある概念の果たす機能がどのように変容してきたのかを論じている.
たとえば,第一章「立憲主義と共和主義」(的射場敬一執筆)においては,英国において,本来身分的な自由や特権を保障していた中世立憲主義が「イギリス国民の自由の守り神」(p.13)として再構成され,近代立憲主義に変容するありさまをスケッチしている.立憲主義 ―具体的制度として述べると「マグナ・カルタ」である― は,中世という文脈,近代という文脈という,それぞれ異なる文脈(コンテクスト)において,異なる読まれ方をされてきたことが分かる.
以下の章も,概ね同様で,功利主義,自然法といった諸概念は,それぞれの時代状況(コンテクスト)の中で,異なる解釈をされてきたことが明らかになる.テーマとなる諸概念は「ユートピア」「社会契約」「市民社会」等々,政治思想を論ずる上で必須の概念についてである.分量的には,それぞれ30ページ前後で論じられており,各々の概念の概略とおおまかな出自・歴史を知る上で最適な量といえるだろう.