刺激的な一冊
★★★★★
重松清との対話の中で格好良い一節を見つけた。「((…)私は失敗っていう概念がわからない。自分で選んだことだし、違う可能性に転換すればいいわけじゃないですか」しびれた。
誰もが自分の置かれている状況を他人や時代のせいにしがちな現代に於いてこの主体的でオトコマエの自意識は光っている。
この対話以外にも桐野の強くあろうとする精神がかいま見えて刺激的な一冊です。
最近の桐野夏生はなんかすごいので読んでみました
★★★★☆
おもしろかったです。なんにも残らないってことはないと思いました。
桐野夏生って、僕の中ではちょっとエグめの大衆小説的なものを書く作家がいるなあくらいに思っていたら、「柔らかな頬」くらいから、目の離せない存在になって、いつのまにか、もういなくてはならない面白い書き手になっているという感じ。特に最近は驚くようなのを連発してる印象。
衝撃的デヴューみたいな始まりじゃなかったから(僕の中でですが)、意外と世代とか出自とか、どういう方か知らないままいたのですが、なんとなく彼女の輪郭が見えました。
対談集ってものによっては誰と話していても同じことしか言ってなかったりしますが、これはとても柔軟。相手によっていろんな感触があります。正直相手によって全く面白くない章もありました。概して女の人との対談の方が良かったでしょうか。
何カ所か傍線ひいておきたいところがありました。
真摯なる表現の妙
★★★★☆
作家同士の対談集ということで拾い読みしてみた。
「対論集『発火点』」なるタイトルに興味をそそられたが丁々発止なやり取りはまったくない。
言葉の表現法を駆使する人達の「単なる言葉」への造詣の深さを多いに味わわせてもらった。
桐野夏生という深い味わい。
★★★★★
桐野という小説家が、日本や、人間や、女性の性を深く洞察して、小説を構築しているかよくわかる。
ででくる対談者も、それぞれ戦い、背負ってきた方ばかりだ。その対談風景には、緊張感がほのかにかいまみれる。
思うに、学術本や論文よりも、小説を読むほうが、本質に辿り着くのはなぜなのか。そのヒントが書かれている。
また、構築する作業は、データーや文献だけでなく、直感や身体感覚がないと作れないのではないか。それは
生きるということに向き合っている女性に、強度があるのではないかと感じる。
現状認識では、果てしなく厳しい社会なのだが、どこか、息づく生命の芳醇さを感じ、安心してしまうのは
なぜだろうか。それは、桐野自身が、精神や身体の根底の中に、生きる事に喜びを感じているからかもしれない。
夜、お酒を飲みながら、朝、コーヒーを飲みながら、この本をめくると、ささやかで深い刺激が味わえる。
水か空気のような
★★★☆☆
すらすらと、非常に読みやすい本です。対談のテープから原稿をおこした人の手柄でしょう。
読みやすいのはいいのですが、読み終わったあと、何も残りません。
するっと入って、そのままするっと出て行った感じです。
対談者たちの女性観とか生き方とか、けっこうあくの強い話をしているにもかかわらず、です。
水や空気のような本、といって悪ければ、井戸端のおしゃべりを本にしたような、といったところでしょうか。
読みやすいのは確かですので、桐野ファンの方は読んでみてもよいのではないでしょうか。