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「学問中心地」の研究―世界と日本にみる学問的生産性とその条件

価格: ¥1,675
カテゴリ: 単行本
ブランド: 東信堂
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よくこれだけ調べたなあ!しかしいくら学術報告書とはいえ退屈すぎる・・・ ★★☆☆☆
タイトルの通りです。もちろん学術的には有意義な内容です。科学の中心が歴史的に移動している事実をエポニミーを網羅的に調査して確認してくれたり、科学最大のメッカたるアメリカのいかなる制度的・社会的特徴が科学に活気をもたらしているのかを高名な研究機関に送った質問票から解明してくれたり、ついでに日本の学士院賞受賞者の出身大学調査だとかなかなかお目にかかれない興味深いデータも満載と内容はかなり充実しています。

ところが、とくに新鮮な洞察も見られず、非常に平凡な結論が出てくるばかりで読んでいて途中で飽きてきます。文科省系の学術報告書なんかにはありがちなことではありますが、この本もその類に限りなく近づいています。これだと「学問中心地」のテーマは真に重要な科学論的テーマだとは読んだひとにはたぶん思ってもらえないだろうなあ・・・。僕は大変に重要なテーマだと思ってるからちゃんと読むけど、学術書って同じコアな関心を共有しているひとたちの間でしか成立しないコミュニケーションになりがちなのが嫌なんですよねえ。

それはともかく、科学の中心地の歴史的移動の本質という問題一点に関して本書の内容を論評すると、本書からはあまりたいした洞察は得られなかったと言わざるをえません。ドイツが大学制度を世界に先んじて整えたことがドイツが中心の座を19世紀に獲得した理由であり、そして後年そのドイツ発の制度を継受し洗練された形に改良しえた国がアメリカであったこと、さらにはアメリカはその国民性からして自由な発想を奨励する文化を醸成していたこと、それが本書から学べた科学的生産性と社会の歴史的相関関係についての唯一の有用な情報でした。

とはいえ、本書に寄稿している研究者が共通に抱いている問題意識は僕も強く共感するものです。「個人の創造性や独創性が、自己完結的な個人の内部だけで生じるのでないことは確かであろう。学問センターを地球レベルのグローバルな視点で捉えたとき、1つの国から他の国へ移動していくという事実そのものが、学問が社会的文脈によって規定されるということを雄弁に物語っている。」(P206)この「社会的文脈」が何であり、それがどのようにして個人の創造的思考を呼び起こすのか、その詳細の探求はきわめて重要な課題です。