ここまで実質的意味の憲法を理解し、ブレのない解釈をする憲法学者はなかなかいないと思います。小嶋憲法学を簡単に概説したい方にはお薦めです。

・小嶋和司博士は、東北大学教授で、1987年に亡くなられています。
本書は弟子である大石眞教授によって3度改訂されてきました。とはいえ、
本書の使命は小嶋・大石教授の講義教本以上のものではないと思います。
・小嶋博士は、芦部信喜博士とほぼ同期の奇才の憲法学者。宮沢=芦部理論とは
一定の距離をとっているため、内容は現在の標準的なものとは異なっています。
各論点だけではなく、叙述のウェイトの置き方がそもそも主流派とは違うのです。
・「大事なことが網羅され、骨を折って勉強しなくてはならぬと、最初から
覚悟を促す書物」を企図されているらしいのですが、網羅性はありません。
密度の濃い本と自負されていますが、正直、私にはわかりませんでした。
少数見解とわりきって小嶋説を知りたい場合にも、残念ながら本書には
さわり程度が載っているか、そもそも全然載っていません。
・小嶋説に触れたいのであれば、当然『憲法概説』を参照するべきでしょう。
大石先生には後継となる体系書の執筆が期待されます。

故・小嶋和司教授の概説書を大石教授が補訂したもの。

憲法の条文を本文中に掲げながらコンパクトにまとめられた概説は，
一般の方々にも，もっと読まれて良い内容を持っていると思います。

たとえば，憲法の，あの読みにくい前文を，文節にばらして図解しながら，憲法の目的とするところを解説するくだりなどは，条文解釈の姿勢そのものを示して余りあると言えるでしょう。
政治学的憲法になじめず，法律学的憲法をかじってみたい方におすすめします。