ドラマ制作のプロセスに沿って10章で構成されているこの本、どの章も興味深いですが、私が一番じっくり読んだのは第9章A Conversation with Colin Firth です。
この作品を見てから、すっかりコリンのファンになってしまった私にとっては非常に読み甲斐がありました。
原作を1ページも読んだこともなく、どうせ女性の読み物だろうと偏見を持っていたコリン。その彼がこの作品の魅力を理解し、非常な躊躇を乗り越えてダーシー役を引き受けるに至った経緯や、撮影が始まってからのさまざまな心理的・物理的困難をどう克服していったかが、彼自身の言葉で語られています。
忘れてはいけないのが、エリザベス役を好演したジェニファー・エール(イーリー)の言葉も掲載されていることです。
とかくコリンの魅力が先行して語られるこのドラマですが、原作は紛れもなくエリザベス・ベネットの話です。
利発でユーモアのセンスがあり、自立心旺盛なエリザベス、その健康的ではつらつとした魅力に溢れたヒロインを見事に演じたジェニファーのこの作品に寄せた思いを、この本を通じて知ることができたのも収穫でした。
本来エリザベスの話であったこの小説を、テレビドラマ化にあたってダーシーの存在を原作以上に踏み込んで描写し、「ダーシーとエリザベス」の話に仕上げていった制作者の意図も、この本を読むとよく理解できます。
同じBBCによる1980年制作バージョンをより高く評価する方々も海外には多いようですが、(私は残念ながら見たことがないのですが)、1995年バージョンを愛する1ファンには、この本は大いに楽しめる1冊です。