Sadder but wiser
★★★★★
内容はシノプシスをご覧下さい。ディリヴァティブと言っても単純に「先物・オプション」という話ではなく、「仕組み債」の世界の話。九十年代後半、CSファーストボストンからモルガン・スタンレーと渡り歩いた青年の業界告発録。出版に先立ってモルガン・スタンレーに妨害合戦を仕掛けられ、お陰様でベストセラーになったということです。
著者は「金銭欲」を強調しますが、「世の中に優秀だと評価されたい」という欲求がまず先ではないのかしら。その評価軸が「金銭的報酬」なのであって。世間に自分を高く売ろうとがむしゃらになった時期の物語、という訳で、これは「青春記」でもあります。「オレは優秀だぞ」と世間に出て行ける人間は十人に一人いるかいないかでしょうが、それに成功し、ある程度は満足し、しかしそれでも悲しかった、と。何故なら「世の中の役に立たない、いや、それどころか、害悪になるようなコトをやり続けるのはイヤだ!」と思ってしまったから。東京オフィス転勤あたりが著者の「ダマスカスへの道」になるのですが、この下りをもう少し豊かに描いて欲しかったですね。
素人に向けた啓蒙書でもあるので、現在価値、デュレーション、コンヴェクシティといったファイナンスのイロハを丁寧に説明してくれます(「convexity is good!」が「丁寧な説明」かは置いておいて・汗)。日本企業の粉飾決算用の仕組み債の説明なども実に丁寧で、是非とも分かってもらおうという情熱が伝わってきます。そのグロテスクさはいかな素人でも理解出来るでしょう。
読了して、Satyajit Dasの『Traders, Guns & Money』と内容的にも重なったのですが、Das氏の悲しみの方が深遠な感じがするのはやはり年輪の違いでしょうか。本書の著者はまだ若いだけあって「怒り」のエネルギーの方が強い。これはこれで「若いって素晴らしい」かもしれません。
最大の問題
★★★★☆
社内でストリップショーなどなど、時代がうかがえる内容は面白かった。
日本の銀行が旅館でしかやらせないことを、社内でやらせてしまうのは
スケールが違う。しかも、ストリップショーにチップを払う。太っ腹で
ある。
著者は金の亡者であったはずなのに、神の啓示を受けたかのよのように
悟りを開いた。その心情変化を詳しく分析してくれていれば、完成度が
高かったはずである。
日本語が小生意気な若造口調なのは、訳者の偏見からなのか、
原文からなのか、が最大の問題である。
スケールを楽しむ
★★★★☆
昨年も大いに紙面を賑わせた投資銀行業界、
その世界をちょっと覗いてみたく本書を購入しました。
金融商品の詳しい部分については知識不足のため理解できませんでしたが、
スケールの大きさで圧倒されました
格付け機関や政府系銀行を出し抜くさまは爽快です
何事もプロには敵わないですね。
金融という世界の恐ろしさ
★★★★☆
天才的頭脳を持った集団が、倫理という枠を跳び越し資本主義の名の下にあらゆる理由をつけて金儲けに走ればここまで出来るという一冊。「デリバティブは人を殺さないが人は人を殺す」という本書のなかの言葉がこの本の真髄ではなかろうか。
日本では商品先物や闇金が細々とやっているえげつない商売の仕方を世界規模で大々的に公然と行う世界。その中にいる人間の心の壊れ方は半端じゃない。
何の意味もわからず株や土地を買い占めていた日本は当然カモになる。
「顧客の皮を引っ剥がせ」を合言葉に次から次へと取引をまとめていく。「客」という言葉の意味を再度考え直したくなる一冊。
内容・超GOOD!日本語訳はいまいち
★★★☆☆
内容はとても良いのですが(難しいデリバティブの仕組みを、読者に語りかけるように懇切丁寧に解説etc.)、訳がいまいち。「債券部」と訳すべきfixed income divisionを証券業務部とか、「投資銀行業務」であるべきinvestment bankingを投資金融とか、わけの分からない訳語が多い。業務の経験者に監修してもらうべきでした。徳間書店さんも本づくりが雑ですね。せっかくいい本なのに。