初めて読んだ著述ミステリー
★★★★★
江戸川乱歩の心理試験。もう20年以上も前に読んだなあ。その頃は本なんかほとんど読まない人間だったのだが、小学生の時、「怪人20面相」なんか読んでいたので、江戸川乱歩が気になって読んでみたのだが、その時は本当に面白かった。この心理試験はいわゆる「著述ミステリー」という奴で、わざわざ説明する必要もないが、要するに最初から犯人が分かっていて、その犯人が一見完璧と思われる犯罪を犯すが、どこかに穴があって、それを探偵役が見事に見つけ出して事件を解決するというもの。ドラマなら「刑事コロンボ」「古畑任三郎」です。
ちなみにこの「心理試験」のネタは、「古畑任三郎」のとある回とほとんど同じです。「古畑任三郎」がパクッったんかな?
二銭銅貨
★★★★☆
1962年に春陽堂文庫として出た『江戸川乱歩名作集7』の新装版。
「心理試験」「二銭銅貨」「二廃人」「一枚の切符」「百面相役者」「ざくろ」「芋虫」の7つの短篇が収められている。
有名な作品が多く、充実した一冊と思う。
しかし、「心理試験」と「二銭銅貨」には感心しなかった。探偵手法といい、結末といい、現代の読者は納得しないのではないだろうか。
面白かったのは「ざくろ」と「芋虫」。ストーリーとして良く出来ている。
まあ、読んで損のない一冊だろう。
はぜ割れたザクロのような
★★★★★
この本の中では、石榴(ざくろ)が秀逸の一品でお気に入りです。
エログロあり、トリックも巧妙で、初めて読んだ時、度肝を抜かれました。
春陽堂の表紙が素敵でここの出版社のを集めているんですが、画像が表示されてないのが残念ですね・・・。
『芋虫』…ものの哀れ
★★★★★
この短編集には表題の『心理実験』の他、『二銭銅貨』『二廃人』『一枚の切符』『百面相役者』『石榴』『芋虫』が収録されていますが、ここでは『芋虫』についての感想をかきます。星5つは『芋虫』につけています。戦争で両手両脚を失い、耳もきこえず口もきけなくなり、触覚と視覚のみで畳の上をはいながら生きる傷痍軍人とその妻の異様な生活の話です。『芋虫』は昭和14年(1939年)、戦時色が濃くなる中で、反戦的という理由で発禁になりました。しかし実際のところは、反戦イデオロギーの意図で書かれたというよりも、むしろ一種の「もののあはれ」が描かれているというほうが妥当な気がします。世間からほぼ切り離された状態で二人の男女がむかいあったまま、運命と愚かさゆえに、ずるずると堕落し、人間性を剥き出しにしていく、という陰惨な話なわけですが、最後には視覚までも奪われてまるで本当の芋虫のようになった傷痍軍人が、口に加えた鉛筆で書いた「ユルス」の一言が感動的です。