オーギュスタンはカンフー映画にハマり、パリの中国人街に住み、カンフーを習うことに。ところが彼は他人と肌が触れることが苦手だった。そこで鍼灸師のリンの診療所で治療を受けることに。治療を受けながら、中国雑貨の店で働きだすオーギュスタン。そして彼は秘かにリンに思いを寄せるようになるが…。
   フランス版ミスター・ビーンと言われる『おとぼけオーギュスタン』の続編。オーギュスタンのカンフーへのハマリっぷりに苦笑しつつ、謎めいた針治療に恐れをなし、不安な気持ちにさいなまれてしまうオーギュスタンをジャン＝レティアン・シベルタン＝ブランが、決して饒舌ではない主人公の心をしっかり伝える好演を見せる。しかし、いちばんの見どころは鍼灸師演じるマギー・チャンだろう。パリでの生活、文化、国民性などにとまどうパリの中国人の姿を、繊細な芝居で見せていく。誠実に真面目に接していたつもりだったけど、気持ちが空回りしてしまっていたリンを流暢なフランス語、静かでエレガントなたたずまいで魅了。香港の大女優である彼女がフランスでも成功したのは、このきめ細やかな演技力があったからだろう。監督は『ドライ・クリーニング』『恍惚』のアンヌ・フォンテーヌ。エロティックな恋愛ものからオフビートのコメディまで、その幅広い演出力にはうなるばかりだ。（斎藤　香）