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黒澤 明 ドラマスペシャル 天国と地獄 [DVD]

価格: ¥1,586
カテゴリ: DVD
ブランド: 東宝
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なかなか良いリメイクじゃないか。 ★★★★☆
黒澤明監督の超傑作をリメイクしたTVドラマ。オリジナルの映画が偉大すぎるため、それと比較して難点を指摘するのは簡単だ。コマーシャルが挿入された箇所で暗転するので緊張感が持続しにくい等はその典型。途中まで犯人が全く姿を現さない原作の不気味さや登場場面でシューベルトのますを使うような切れ味の良さはない。

しかし、原作にほぼ忠実なストーリーや台詞を踏襲しつつ、21世紀の小樽が舞台のTVドラマにほとんど違和感なく移植した、監督や俳優の情熱の志の高さを評価したい。

表情のアップの多用等、カラーのVTRでの撮影の特性を活かしている。有名なかばんを燃やす煙はどうなるか等、原作を観て筋を知っている人は多いだろうから、本作でのアレンジが楽しみになる。ジャズのスタンダードの演奏に似た期待感で本作に接すればよいだろう。それだけ原作の脚本が優れており、またそれを再現する現代の代表的な俳優やスタッフが本作に熱心に取り組んだことの証だ。

俳優には相当なプレッシャーがあったと思うが、難しい犯人役をそつなくこなした妻夫木聡には「悪人」へと飛躍する萌芽を感じることができる。
あの最高傑作をリメイクするという不可能への挑戦、評価したい。 ★★★★☆
原作は私の一番好きな映画である。圧倒的な貧富の差、社会の混乱、その中で、権藤氏を中心とした人間模様、そして、非常に奇抜なトリックが混ざった、最高傑作である。そのリメイク、非常に難しい挑戦だと思う。現在の日本には、原作当時の圧倒的な貧富の差はなく、社会も整然と発展している。現在の研修医が、”冬は寒く、夏は暑くて眠れない”アパートに住むなど、ありえない。3億円も価値も非常に下がっている。原作で描かれた貧民街、麻薬中毒者の巣窟は、今の日本にはない。トリックも通用しない。何故カバンに発信機をつけないのか、電車の時間が前日にわかっているなら何故沿線に警官の完全配備をかけないのか、何故ヘリコプターで急襲しないのか、等、無理がある。
しかし、その無理を承知で原作を忠実に再現しようとした挑戦は評価していいのでは。ともかく、権藤氏を中心とした人間模様はうまく描かれていえる。彼の苦悩、それを叱咤しながらも支える妻、権藤氏に感銘されながら、捜査を進める警察。確かに犯人の苦悩は明確には描かれていないが、それは、研修医が貧困のどん底にいるなどありえないという現在の状況の中で、その苦悩を描くなど、あまりに無理なことである。本来ならば、原作を現在の日本にあうように大幅に改ざんし、リメイクするほうが作品は作りやすかったはず。それをしない挑戦は評価したい。
原作に大ファンであること、その原作を全く違う現在で再現しようとした挑戦、そして、ともかくも権藤氏を中心にうまく描かれている人間模様、4星を挙げたい。
背筋も凍る怖さ ★★★★★
妻夫木聡さんの悪役が観たくて購入しましたが文句なく大満足でした。
数年前に悪役で出演した時より一段と演技に磨きが掛かってまさに背筋も凍る怖さです。
特に交差点で煙草の火をもらった後に権藤の後ろ姿を見ながら笑う場面、美人の売人と麻薬の受け渡しをしている際に見せた顔、権藤との面会中に見せた演技は最高でした。
他の俳優さんも言うまでもなく素晴らしく、舞台の小樽に行ってみたくなりました。
オリジナルは拝見していませんが是非観てみたいと思います。
優れた脚本を、豪華キャストで、鶴橋監督が演出しても標準的な水準の作品にしかならなかった ★★★☆☆
 もし、黒澤監督の映画「天国と地獄」がこの世に存在せず、オリジナル脚本としてこのドラマが放映されれば★は4〜5でもいいと思うが、やはり名作映画のリメイクは簡単にはいかない。
 黒澤監督の死後、ここ数年のリメイク・ブームは今の若い人に黒澤明という偉大な映画人がいたことをアナウンスする意味はあったのかもしれないが、リメイク作品のほとんどがオリジナルとの比較を抜きにしても標準以下の出来なのはどうしたことだろう。
 黒澤監督はいい脚本がないと名作は生まれないと言っていたが、もしかしたらリメイクを作る人達はみなアンチ黒澤で、脚本が優れていても演出や演技や音楽が3流以下であれば絶対に名作は生まれないことを証明したかったのだろうか?と思うような作品ばかりだった。
 そんな中で唯一の合格点(傑作や佳作ではなく標準点という意味)だったのは、この作品だけで、鶴橋監督の演出よりも俳優陣が善戦していたのが印象に残る。
 佐藤浩市は中井貴一と並んで2世俳優でありながら今の邦画界ではもっとも演技の優れた俳優だと思う。三船の権藤に較べれば線が細いが、現代に置き換えた場合はむしろあの役作りで正解ではないか。阿部寛は善戦だが仲代のクールで有能な刑事像にはおよばなかった。鈴木京香はオリジナルの香川京子もそうだったが役として印象が薄かった。そのほか平田満、橋爪功、杉本哲太らの脇役の演技も悪くなかった。しかし妻夫木聡の犯人役は大きなミスキャストで、その風貌、服装、髪型などはとても(佐藤浩市のいる天国に対し)地獄のような環境におかれているように見えず、山崎努とは比較の対象にすらならないほど違和感があった。
 所々に面白いシーンがあったが、鶴橋監督がこれだけの実力派キャストで演出しても凡作の域を出なかったのには失望した。もう黒澤作品のリメイクはやめた方がいいと思う。
テレビドラマとしてなら「○」 ★★★☆☆
いまさら説明不要の黒澤明監督「天国と地獄」のテレビ用リメイクです。2007年テレビ朝日系列で放送されました。

ほかの方もコメントしていますが、このリメイク作品をオリジナルと比較してしまうのはあまりにも「酷」だと思います。時代背景も、出演者のスケールも、予算のかけ方も桁違いです。なんとも窮屈なテレビ画面で原作の訴えたかったことを表現しようとしたら、どうしてもこうなってしまうのでしょう。また、テレビの放送コードのことも考慮しなくてはいけません。まずはそれを念頭に置きましょう。

事件の舞台はヨコハマから小樽に移り、時代設定も現代に移っているため、描写としてもかなり変化しています。オリジナルではほとんど自己主張をしなかった権藤の妻役、鈴木京香も色香を振りまきながらそれなりの存在感を示しています。また、オリジナルにはなかった共犯女性が登場するあたりも、きょうびの男女共同参画社会を意識したのでしょうか。皮肉ではなく、視聴率も考慮してのことでしょう。

しかし冷静に考えてみれば、いまどき「身代金誘拐」など流行るわけなく、またオリジナルでは魔くつと呼ばれたヨコハマ黄金町とクスリ、そして犯罪という図式で十分な説得力を持たせていたのに対し、小樽へと場所を移した時点で犯人のモチベーションも一瞬にして空虚なものに変えてしまっています。佐藤浩市、妻夫木聡、阿部寛などの表情からほとんどリアリティーを感じないのも、設定の不自然さからくるのでしょう。見る人にとって貧困や差別からくる犯罪といっても説得力が欠けるのです。オリジナルで描かれた黄金町や犯罪の巣窟のような「根岸屋」などでの猥雑さ、いかがわしさなどの「悪の要素」がほとんど描かれていないのも物足りなさを感じました。

と色々書きましたが、正月の特別ドラマとしては上位の出来と思います。ただ、オリジナルを見ていない人は、ちょうどいい機会ですから、ぜひご覧になることをお勧めします。