ランディスよ、お前もか。
★★★★☆
2006ツール・ド・フランスは、ドーピング疑惑に始まり、ドーピング疑惑に終わったなんとも後味の悪い大会だった。かつて、フェスティナチームのドーピング疑惑で、フランス人山岳王リシャール・ビランクが槍玉にあげられマスコミに叩かれた事件が記憶に新しいが、自転車競技とドーピングの切っても切れない関係は、僕らの知らないところで脈々と続いているようだ。
本書の作者ポール・キメイジがプロ選手だった頃は、フランスの偉大なるチャンピオン、<穴熊>ベルナール・イノーが引退し、群雄割拠の時代を迎えた時期だった。ちょうど、ツール7連勝をはたしたランス・アームストロングが引退して初めての2006年のツールのように。見えない何らかの圧力がふと消えた時、ドーピングという黒い霧が噴出する仕掛にでもなっているのだろうか。
作者キメイジも選手時代、充電とよばれるアンフェタミン注射に手を出したことを認めている。手を出さないではいられないほどつらいプロ選手生活が、本書の中でセツセツと語られている。「選手は悪くない、それを統制すべき協会側に問題がある」とも作者は語る。競技としての面白さと選手の安全をはかりにかけた時、どちらが優先されるべきなのか。UCIプロツールを見ている限り、その答えはまだ出ていないようだ。
2005年にツール観戦に行った時のことだ。ランスとバッソが頂上ゴールに向けて華麗な戦いを演じていた時に、水びたしになった最後尾のバックステッド(リクイガス)が息も絶え絶えに、観客に大きななケツをおされながら坂を上っていく姿を、この本を読んで思い出した。結局、バックステッドはそのステージをタイムリミットで失格となった。
泣けました
★★★★★
どんな世界でも同じなのでしょうが、脚光を浴びる人達は極一部で、それ以外の人達は辛い生活をしていることがわかります(それがプロといえばそれまでですが)。
この本を書いたポール・キメイジは本当に純粋に自転車を愛している人だということを感じました。
スターではない、一般的な選手の年間の生活。
ドラッグには手を出したくない、と強く思いながら、生活のためにドラッグに初めて手を出した時、その苛立ちから妻と喧嘩したこと。
息子の活躍を観戦しに来た両親に、ドメスティックとして働いている自分を見られたくなくて言い訳を考えるところ(それに対する元アマチュアレーサーの父親の行動は最高です)。
自分なりの区切りを考えて引退を決意するところ。
等々、ロードの巨人たちも超人ではない(いやそれでも十分にすごいのですが)、頭身大の人間なんだということを感じました。
自転車界の裏面
★★★★☆
プロのロードレーサー生活がいかにつらく厳しいものかを日記風に書きなぐっています。出版時、この業界にはびこるドラッグ問題を内部告発したものとして話題を呼びましたが、その記述はほんの一部で大半は光輝くスター選手の日陰で苦しむ無名プロレーサーの心情を吐露していて共感できます。終始愚痴っぽい文章で綴られていますがその気持ちは痛いほど伝わってきます。