ブルーグラス・マンドリンのヴェテラン・プレイヤーにして熱烈な愛好家であるデヴィッド・グリスマンの場合、腰を上げるまでに多少の催促が必要だったかもしれないが、この『Life of Sorrow』のために、みずからの遺したぼう大なテープのストックを掘り起こし、それまでリリースされたことのなかったトラックを選び出した。
これらはブルーグラスの大家たちと共に録音したもので、マック・ワイズマン、デル・マッカリー、ラルフ・スタンレーらが参加している。スタンレーの歌う「Man of Constant Sorrow」は感動的だ。ほかの参加アーティストとしては、バンジョーとマンドリンの素晴らしいデュエット曲「Doin' My Time」で演奏を聴かせてくれる今は亡きジョン・ハートフォード、オートハープ奏者でありシンガーでもあるブライアン・バワーズ(「Farther Along」)、グリスマンに最初にマンドリンを持たせた男であるフォークロア研究家のラルフ・リンズラーが挙げられる。
ここでのグリスマンの模範的なマンドリン演奏は、厳密にブルーグラスの伝統にのっとったもので、グリスマン自身のスタイルである「ドーグ・ミュージック」で顕著なジャズっぽい脱線は見られない。しかしながら、もっとも革新的なミュージシャンであるグリスマンが、この伝統的なセッティングの中で最高に感動的なソロを披露しているのは、愉快なパラドックスといえそうだ。(Michael Simmons, Amazon.com)