トランスジェンダー、トランスセクシュアル、トランスベスタイトなどに関する基本的知識を得るのに適した書物である。著者は人間個人の既定の仕方を、セックス、ジェンダー、性自認、性志向のそれぞれにわけて考えている。これでいけば私個人は、生物学的なセックスは男、社会的役割たるジェンダーは「夫」であり「父親」である以上男であり、自らも自分を男と認めており、性的な志向は他の女性に向いているので、ほぼ100パーセント男性と言えるが、伏見によればそれも結局は社会的に構築されたフィクションに過ぎないということになる。
以上の領域の境界を越えるトランスジェンダーの様々な例が簡単に紹介されており、チャートも駆使してわかりやすい。ひとづだけ文句を言うと「賢い読者はもうお気づきだと思うが」というような物言いをする著者が非常に多いが、伏見もその例に漏れない。私はそういうものの言い方は好きではない。悪しからず。