ケン・ローチの映画が好きな方に
★★★★★
映画はヒルディッチ氏の愛聴する音楽が、SPの頃の流行歌
から、50年代あたりの流行歌に変わっていて、
残念でした。
トレバーは最近になって翻訳が多くなされ、
微妙にブーム(?)の感がありますが、
ぼくはそっちより、この忘れられかけている
長編をお薦めします。
単にサスペンスでもなく、かといってシリアスすぎて
読みづらいわけでもない、バランスの取れた作品です。
短編では皮肉なオチが多いトレバーも、
この作品では少しその手を緩め、
ヒロインにほのかな優しさを見せます。
でもハッピーエンドとはいえません。
だからといって、悲惨な結末だとは、
ぼくには思えないのです。
みなさんお読みになって、どうご感想を
持たれるでしょうか?
孤独の中の希望
★★★★★
この小説は映画化されています。映画も大変素晴らしいが、この原作の力はもっとすごい。町を去った恋人を探す為家出をした少女,フェリシア。何のあてもないまま一人見知らぬ土地を歩き回る。そんなとき一人の男が救いの手を差し伸べる。純粋なフェリシアは不安を抱きながらもその男に希望を託す。その男もまたフェリシア同様、孤独の中に生き、少女に屈折した愛情を注ぐ。誰も二人を理解しない、閉ざされた世界の中で二人はそれぞれの結末を迎えます。それでもフェリシアの旅は終わらない、そういうラストです。残酷で暗いストーリーですが、孤独と向き合うフェリシアの勇気に、納得のいかない結末でも、感動を覚えました。サスペンスとしても読めます。奥が深いです。