天国は封鎖され、地獄は水没した。
無限に並行する世界は、その悉くが枯れ果てていく。
生き残った天使と悪魔は、最後の希望を抱いてその地に集った。
浮遊する煉獄────“東京バベル”
人間と共に全七階層から成るバベルを巡礼し、ヤコブの梯子(はしご)より天国の門を再び開く。
それは天への贖罪である。
だが、その目論見は破綻した。
狂乱する巡礼者たちは、東京バベルの階層を支配し、全てを破壊し尽くそうとする。
一進一退が続く中、一人の少年が滅び行く世界から救い出された。
天道刹那──生まれついて人間として扱われなかった少年。
彼は自分を救った“夜の魔女”リリスと共に、東京バベルの踏破を目指す。
────教えて。何故、貴方は生きようとするの?
その問い掛けへの答えを探しながら──
・神災
突如訪れた全ての破滅。
数多の天使は天国を追放され、天国への門は固く閉ざされてしまい、地獄は大洪水により水没し、悪魔も住処を失ってしまった。
無数に存在している並行世界も次々に崩壊していく。神の怒りに触れたことが原因とされるこの大災害を「神災」と呼ぶ。
・東京バベル
元は“煉獄”と呼ばれ、罪を浄化するための場所であった。
巨大な正八面体の形状をしており、空と海の間を浮遊しており、内側は七つの階層で構成されていて、それぞれが東京の町並みを模している。
・天国
神災以降、その門は固く閉ざされ、現在はどうなっているのか不明。
東京バベルの遥か上空に位置する。第七階層に存在する天国への階段“ヤコブの梯子”を昇ることで辿り着ける天空の楽園。
本作はこの天国へ行くことが目的である。
・地獄
神災の際、四十日と四十夜降り続けた未曾有の大雨により完全に水没。
東京バベルの下に広がる海の底に沈んでしまった。今はリヴァイアサンがひっそりと暮らしているだけである。
・無数に存在する並行世界
天国と地獄、煉獄である東京バベルは唯一無二の存在だが、人間たちが住む“世界”は、長い歴史の中で幾重にも分岐し、並行する形で“無数に存在”している。
おおよそ考えうる限りの様々な世界が存在するが、神災によって次々と崩壊を始めている。
・天使と悪魔
全ての並行世界を管理・運営する存在。
突如起こった神災によって、お互いに住むべき場所を失い、東京バベルへと移住することを余儀なくされた。
神の許しを乞うため、閉ざされてしまった天国の門を、再び開けることを目的としている。
・人間
天国の門を開けるために必要な存在。
そのため天使・悪魔らは、あらゆる並行世界から、力に、知恵に、あるいは別の何かに秀でた人間を東京バベルへと集めている。
・巡礼
稀に自らが東京バベルにいることに気付く人間が現れ、天使と悪魔を伴って、天国を目指し東京バベルを昇り始める。
第一階層から第七階層までの巡礼を経ることで、再び天国の門は開かれるとされているが、未だ誰も天国へと辿り着いた者はいない。
・祝福の合唱(コーラス)・精神汚染
天国へと到達出来ない原因の一つ。精神に直接鳴り響く祝福の合唱。
その囁くような歌を聞くと、精神が汚染されると言われている。
階層を昇る度に歌声は大きくなり、どんなに屈強な精神を持った者でも、天国へと辿り着く前に精神崩壊してしまう。
・支配者
天国へと到達出来ない原因の一つ。祝福の合唱によって精神崩壊した者の成れの果て。
己のゆがんだ願望のままに殺戮を繰り返すだけの存在。七つ存在する階層にそれぞれ存在し、
強大な力によって、その階層を自らの望む形へと変貌させ支配し、巡礼者に襲い掛かる。
・パンドラ
学校を模した集落。東京バベルの最下層に位置し、天使と悪魔、そして人間が生活している。
祝福の合唱や支配者によって侵食されつつある東京バベルで、現在も安全を保っており、巡礼者たちにとって活動拠点となる場所。
東京バベルの存在に気付かない人間たちは、日本の一高校生として平常通りの授業を受け、いつもと変わらない日常を過ごしている。
・存在理由(レゾンデートル)
東京バベルにおいて、誰もが持っている限定世界侵食術。