当事者による衝撃的な核密約の暴露
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沖縄返還の際に核の再持ち込みに関して「密約」が結ばれたということは最早「定説」となっているが、この定説が形作られる上で決定的な役割を果たしたのが15年前に出版された本書である。佐藤総理の「特使」として核密約のアレンジに奔走した筆者は、佐藤総理亡き後、日本側の唯一の「証人」であり、その証言は極めて衝撃的であった。学者だけあって論旨は実に明快、資料の裏付けもしっかり取ってあるし、文章も非常に上手い。非常に分厚い本だが、エキサイティングな内容に引き込まれ、あっという間に読破してしまうことは請け合える。
本書については、偽の証言が為されているといった批判があるようだ。確かに筆者はかなり自己顕示欲が強い人間であることが本書を読んだだけでも分かり、自己正当化が為されている箇所は必ずあるだろう。しかしながら、佐藤総理がキッシンジャーやロストウとのやりとりはそれだけでも超一級の資料であり、一読の価値がある。日米関係、外交に関心がある幅広い方々にオススメしたい書物である。