伯爵夫人 [DVD]
価格: ¥1,565
チャーリー・チャップリン最後の作品は、映画界において、長く球界に留まりすぎたウィリー・メイズのような位置に置かれている。つまり本作は、明らかに持ち味を失った人物からの悲しい告別の辞なのだ。マーロン・ブランド(本作においてチャップリンとソリが合わず、監督の真面目な意図をぶち壊すという特異な習性を発揮したことは有名)が演じるのは、大使に任命されて香港から旅立とうとしているアメリカの億万長者。彼は船室のクローゼットに隠れていたソフィア・ローレン――ロシア貴族の娘で、ギャングの元愛人という役柄――を発見する。ローレンの望みはアメリカに渡ることだ。ブランドは、あまりいい顔はしないものの、彼女に助力を申し出る。結末は特にコミカルでもロマンティックでもない。
チャップリンのさり気ない演出の上手さをひとつ挙げるとするなら、カメラをなだらかに揺らしたり、ゆっくり前後させたりして豪華客船の動きを表現していることだ。しかし、ユーモアは冴えがなく、ブランドとローレンの共演は期待はずれで、物語は魅力に乏しい。かつての「小さな浮浪者」ことチャップリン自身も顔を見せるが、幸いにも短い出番で、船酔いしてドアを開け閉めしながらフラつく客室係の役を演じている。賢明なことに、一言も発することなく。(David Kronke, Amazon.com)