常滑焼の最新の編年研究の成果が紹介されたシンポジウムの記録集
★★★★☆
本書は日本福祉大学知多半島総合研究所が1994年に主催して実施した全国シンポジウム「中世常滑焼をおって」の記録集です。このシンポジウムでは、中野晴久、赤羽一郎両氏によって1994赤羽・中野生産地編年が提示され、赤羽氏によって研究史、中野氏によって編年案の詳しい内容と縮尺が小さいのが残念ですが編年表がつけられています。シンポジウムの記録集なので話し言葉で書かれていて非常に読みやすくなっています。また、圧巻なのは荻野繁春氏の発表で甕の大きさに規格があって、その比率が時代を追うごとに変化していることを示唆する発表がなされていることです。具体的には、12世紀代、13世紀代始めまでは一石以下の甕が中心だったのが、13世紀中ごろになると一石以上のものが多くなり、14世紀になると!さらに大きなものがみられるということです。また、本書の後半部分は常滑焼の流通研究の当時の最新の研究成果が盛られていて、中世の交易や消費といった経済史に関心があれば興味深く読めるのではないでしょうか。