説得力あり!
★★★★☆
専門の学者でなく民間のコンサルタントの書く心理学モノは、ほとんど著者の経験則に基づく論述である。だが本書はやや毛色が変わっていて、まさにタイトルにある通り「科学」を試みている。すなわち1万8000人に意識調査を行い、その結果を統計処理して仕事への意欲を支配する11の因子=モチベータを独自に抽出したのである。
著者グループが抽出したモチベータは以下のとおり。
・適職 …仕事自体が好き、自分にあっている
・プライベート …家族や余暇を大事にできる
・自己表現 …自分の考えや発想、個性が仕事で発揮できる
・環境適応 …仕事の状況変化に自分を適応させ、困難を乗り越える
・環境整備 …会社の設備や立地条件いい、仕事の手順が明確である
・人間関係 …職場での人間関係がよい
・業務遂行 …仕事をやり遂げ、目標を達成することができる
・期待/評価 …上司や周囲らの期待、信頼、評価が高い
・職務管理 …仕事の知識、理解が深く、主導権をとることができる
・報酬 …仕事や年齢に見合った十分な給料もらっている
・昇進 …仕事上の権限があり、役職が高い
特に目新しいものではないが、これらモチベータのどれが利いているか、という観点で性格をパターン化した点がおもしろい。たとえば「クリエイタータイプ」は適職がモチベータとして強く利いていて、逆に期待や報酬、昇進はモチベータとしてはあまり利かない。つまり少々給料は安くても、仕事そのものに充実感があれば、どんどん前向きに仕事に取り組んでいけるタイプ、である。
薄い新書サイズの本で、この手のものを書くには著者たちもまだ若く、記述そのものには青臭さが残る。が、こういう切り口もあったか、と新たな発見が多数あった。モチベーションタイプ判別の簡易テストも付属していてそれなりに「使える」本である。