作者の一番お気に入りのシリーズの第一弾なのだが、それにしては次回作が出るのが非常に遅く、ホントに気に入っているのか?と思ったほどだ。

雰囲気は青年が少女を守ってのオカルト系異世界迷い込み物語なのだが、挿絵の「ふくやまけいこ」さんによる絵の可愛らしさとのギャップが甚だしくて、いい意味で「おどろおどろしい」感じはしない。
その分、オカルト系ファンタジーとしてもいまひとつではあるのだが・・・・。
タイトルが四季をそれぞれテーマにしている(つまり全4作)のだが、無理に4作にする必要があったのだろうか?
逆に大きな「制約」になっていったような気がする。

　田中芳樹さんの文章はともすると独り善がりな面も見られるが、それを消してくれるのがふくやまけいこさんの挿絵。文章を読んでいるだけでは賄い切れない部分を、うまい具合に想像力を増やしてくれる。さすが、タッチの優しい人物を描かせると日本一のふくやまさん。本文をしっかりとサポートし、尚且つ本編を邪魔しない。
　ふくやまさんのマンガで、同じ｢夏の魔術｣があるが、どちらが欠けてもダメでしょうね。両方をなるべくすぐに読むのがこの本の楽しみ方かもしれません。

田中氏の作品は屈折した皮肉が多く、屁理屈オタクのガス抜きみたいな
ところが露骨に見えるので好きではなかった。しかし、ふくやまけいこ
という、人間のかわいさを描かせれば天下一品の漫画家の絵に
イマジネーションを得た今作では、表面的な皮肉が極端に抑えられており、
氏の長所である美しい文体と巧みな話の構成が嫌見なく楽しめる。
子供の頃に抱いていた信頼感や友情をまた感じられたような
幸せな読後感がとてもよい。
表紙の絵に食わず嫌いだった人（私もそうだった）は是非ご一考を。
氏のシリーズものの中で一番面白く、お勧めしたい作品である。

田中芳樹氏の作品の中で、割合好きなシリーズです。ジャンルは一応ホラーなのだけれど、日本古来のホラーというよりもクトゥルフ系です。怖い、というのはないので、ホラーが苦手、というひとも安心。