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Descartes' Error: Emotion, Reason, and the Human Brain

価格: ¥2,030
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Penguin Books
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感情のソマティック・マーカー仮説 ★★★★★
英語の本なので、かなり達者なひとでないと取り付きにくいと思いますが、日本語の訳もでているそうですので、読もうかどうしようかなと思っている方にはすごくおすすめです。著者はポルトガル人で、神経生物学(Neurobiology)が専門の研究者です。感情のソマティック・マーカー仮説というのは、ぶっちゃけて言うと、感情というのは体の様子を神経が頭に教えてくれる物であって、無意識によいものと悪いものを区別している生理的な反応のことだとするもの。「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい」そして、まず理由(reason)ありきではなく、感情を説明するために理由ありき、だというようなことです。

ええと、この本に行き着くまでに、たぶん多くの方は一般書から行き着いていると思いますが、この人の研究は、基礎的な脳科学の難しい研究をすぐに実生活に使えるように、自己啓発とか、ポジティブ心理学とか、みんなが得する交渉術とか、おおざっぱにいうとそんなものへたくさんの影響を与えているようです。100年先の未来を見据えた、すばらしい内容が含まれていますよん。ちょっと難解なので早く一般向けのもっとカンタンに読める本が出てくるといいなあと思います。アメリカではこの手の話題が2000年頃からはやっているみたいですが、日本でも早く広まるといいですね。

初版1994年の本ですが、この版のprefaceは2005年に書かれており、すごくいいです。
ソマティック・マーカー仮説 ★★★★☆
ダマシオ夫妻といえば、アメリカ神経科学の、現在進行形の第一人者。その世界では有名な「ソマティック・マーカー仮説」を説明した本であり、かなり量が多くて難解な本でした。各章に訳者によるまとめが挟まれており、助かりました。

脳の話題・・・というと、失語から認知症から、あるいは視覚聴覚などさまざまな話題があります。この本は、前頭葉とくに腹内側部が障害された場合に起こる、「将来に対する不安や計画性が障害されて、行き当たりばったりの、本人にとって明らかに有利でない行動を取ってしまう」病態に注目して、そのメカニズムをソマティック・マーカー仮説から説明しようと試みています。

ソマティック・マーカー仮説とは、本書によれば以下のようです。

  >>ソマティック・マーカーは、特定の行動がもたらすかもしれないネガティブな結果にわれわれの注意を向けさせ、いわば次のように言い、自動化された危険信号として機能する。

  「この先にある危険に注意せよ。もしもこのオプションを選択すれば、こういう結果になる」

この信号は、われわれがネガティブな行動を即刻はねつけ、他の選択肢から選択するように仕向ける。<<

そして、この機能を果たしているのが情動であり、この本によれば情動とは、前頭前野や辺縁系の機能のみで生じるわけではなく、身体を経由し、その相互反応によって生ずるものとされています。この本では、脳のみが優位である現在の考え方を批判し、行動決定における情動の重要さ、そして情動をもたらす身体の重要さ(というより、脳ー身体というふうに分割して考えるべきではないということ)を述べています。

前頭葉損傷者では、まるで彼らに将来がないかのような行動を取ってしまうことがあります。本書でも、こうすると不利になるよ、ということを学ぶべきゲーム場面で、前頭葉損傷者ではそれを学び取ってゆけなかったという例が出されています。ソマティック・マーカー仮説によれば、それは脳損傷により、情動と関連する身体的反応が誘発されなくなるためではないかと述べられています。

そう考えると、逆に、前頭葉に損傷のない人では、いろいろな不安要素を感じとり、それを将来の生きやすさのために活かしてゆく機能が備わっているんだなと実感します。本書でも書いてありますが、その機能はかなり無意識的であり、なかなか気づかないものです。

またその機能も、度が過ぎると過剰な予期不安になったり、恐怖のために身動きがとれなかったり。そんな症状にも、きっと脳だけではなく、一般に思われている以上に身体性が関わっているのかもしれません。

かなり難解な本なので、何度も読み返してみたいと思いました。
内容はよいのに翻訳が・・・ ★★★★☆
リハビリテーションの分野で脳障害の患者さんと関わっていますが、これまで教科書の説明では納得のいかなかったことがこの本のおかげでかなりすっきりしました。また実際の患者さんを見ている立場から逆にダマシオ氏の仮説には大変共鳴する部分がありました。それほどすばらしい内容なのに、医学・生理学の基礎知識を持って読むとどう考えても専門用語の誤訳であろうと思われるところが多々見受けられます。初期**皮質、神経終端、集合域???。心理学の術語には詳しくないので他にもあるかもしれません。訳者も悩んではいるようで原語を併記している部分もあるので、自分で調べ直したり類推がきく部分もありますが。原著者が医学の専門家であるのに、工学のバックグラウンドの方が訳すのは苦しかったのでは?いくら一般向けの本でも専門用語はきちんと訳して、巻末にでも用語の解説を一般向けに付けた方が良かったのでは?その方が中途半端な訳者解説よりよっぽど役立つと思います。内容が深いだけに残念。タイトルはもちろん「デカルトの誤り」とすべきでしょう。
意思決定(推論・決断)における情動と感情の役割 ★★★★★
西洋では、デカルトの二元論に基づく人間の探究の歴史が相当長いようで、心理学や脳科学においても、理性だけ、知能だけ、大脳皮質だけ、というように、有機体である人間のなかで「思考」に関係のある部分だけを無理矢理切り分けて研究することが主流のようです。

東洋では、老荘思想を受け入れてきた長い歴史がありますが、学術の世界やビジネスの世界では西洋からの思考方法・実践方法を取り入れてきたことから、やはり人間という有機体を切り刻んで研究・実践することが目立ちます。

このような状況のなかで、本書は、脳は人間という有機体を生存させるために進化・適応してきていること、脳は身体がなければ、身体からの反応がなければ機能しないこと、を様々な研究結果や著者の仮説を踏まえて解説しています。

理論の中核は「ソマティック・マーカー仮説」で、概略としては、外部環境の変化の知覚(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)⇒内部環境(身体)の状態の変化(これが「情動」)⇒状態の変化の知覚(これが「感情」)⇒推論&意思決定(これが「理性」)⇒行動、という有機体全体にわたるループによって人間は生きている、というものです。
これによって、理性を働かせるためには情動や感情が必要不可欠であることがわかり、純粋理性というものは存在しないことがわかります。
また、このことから人間の理性だけを無理矢理切り出して研究している心理学・脳科学の理論は、全体を表していないことになります。
更に、このことから合理的人間を前提に置くことで理論化している全ての経済学は、根本から再構築しなければならないことになります。

また、心とは脳と身体との相互作用から生まれる様々なボディ・マップのバランスから生まれるとしており、心についてホムンクルス誤謬に陥らずに適切な理論を提示しています。


本書は、人間そのものを正しく理解するための中核的な位置づけになるものだと思います。
人間に関する様々なレベル・エリアの研究や主張がこれまでも、これからも数多く生み出されるのでしょうけれど、本書はそれらの是非を検証するうえで非常に役立つものだといえます。


あと、本書の中核ではありませんが、著者の研究過程で知能について触れられています。
個人的・社会的なものを扱う脳領域(前頭前・腹内側部)と、数学・物理・論理といったものを扱う脳領域(前頭前・背外側部)が異なるということです。これは、ハワード・ガードナーやダニエル・ゴールマンが提唱している多重知能(人間の知能はIQだけではない)、EQ(Emotional Intelligence)、SQ(Social Intelligence)が最高レベルの脳科学者によって立証されたということです。


ただ、残念なのは参考文献が英語表記のままであることです。邦訳された専門書のなかでまともなものは参考文献が掲載されており、かつ邦訳されているものは日本語表記になっています。出版社・訳者どちらの意図で手抜きをしたのかはわかりませんが、読者の方を向いて仕事をしてほしいものです。
デカルトの呪縛の根深さ ★★★★★
 誤訳がある,訳が難解との意見もあるようですが。
 訳はわたしには読みやすかったです。
 原書と読みくらべていないから,誤訳がどこにあるのか気づけません。すんなり読めてしまいました(具体的に指摘なしで誤訳があると主張するのはアンフェアだと思う)。
 
 G.K.チェスタトンという思想家・小説家が,「狂人とは理性を失った人のことではなく,理性以外のすべてを失った人のことである」と言っています。

 本書には,人並み以上の理性をそっくりそのまま保ちつつ,脳の損傷によって感情を失った人の実例が何件か紹介されています。実際,かれらは社会生活を営むことが困難になりました。
 わたしたちの判断は,感情ぬきでは上手くいかないのだそうです。

 ダマシオは,環境と身体,脳とそれ以外の身体,脳の各部位相互,理性と情動など,わたしたちの生がいかにさまざまな相互関係のなかから成立しているか,詳細に語ってくれます。その語りは,おのずと「近代的自我」あるいは「私」といった哲学的妄想の病理から,読者を解放してくれます。

 本書では,自己・意識について,神経学の立場から,いかにしてこれらが成立するか,著者ダマシオの意見が載っていて,それなりに興味深いです。

 もちろんそれでいわゆる「意識のハードプロブレム」が説かれるわけではありませんが。

 訳者の解説が各章の前に載っていて,理解を助けてくれます。キーワードについて,キーワードにあてた訳語を選択した理由についても,述べられています。素人読者の目からみると,訳者はきわめて誠実な仕事をしてくれています。