歴史にも仮説は許される
★★★★☆
ハーヴァード大学・歴史学教授のニーアル・ファーガソンは、数多くの本を出しているが、なぜかまだ1冊も邦訳されていない。一つの理由は、すべて膨大な大著だからだ。だが膨大な資料を分析する手法は確かなもので、20世紀にはなぜこれほどひどい戦争が集中したのか、改めて人類の愚かさ加減を思い知らせてくれる。第二次世界大戦にしても、もっとしっかりしたチェック機能が働いていたら避けられたかもしれなかった。歴史に「if」という仮定は許されないとされているが、著者は「もしも」を使って解明していく。核戦争や民族抗争も、いまだ過去のものにはなっていない。「憎悪の時代」といわれる20世紀の人類の足跡を振り返ることによって、21世紀以降がいくらかでも平和に近い状況になって欲しいものだ、と願わずにはいられない。