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Woman Hollering Creek and Other Stories

価格: ¥1,701
カテゴリ: ハードカバー
ブランド: Random House
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   メキシコ人を父に、メキシコ系アメリカ人を母にもって1954年シカゴに生まれたサンドラ・シスネロスが、はじけるようなことばのリズムをもつ最初の短篇連作『The House on Mango Street』(邦題『マンゴー通り、ときどきさよなら』)を出版したのは1984年のことだ。作品の舞台はシカゴの「バリオ」、スペイン語を話す移民たちの下街だ。そこには一旗あげようと国境の南から移民してきた人々の様子が12歳の少女の目を通して、実に生き生きと描かれていた。この作品はアルテ・プブリコ・プレスという小さな出版社から出て、じわじわと読者を獲得し、1987年に大手ランダムハウス社のヴィンテージ版に入った。

 『The House on Mango Street』はそれまでほとんど聞こえてこなかったラティーナ(メキシコ系アメリカ人女性)たちの内部の声を表舞台に出した、という画期的な役割を担ったのだけれど、ここで紹介する短編集はその続編といっていい。『The House on Mango Street』の主人公エスペランサが少し大きくなったころの話から始まり、しだいに舞台を国境沿いの地域、シスネロス自身がいま住んでいるテキサス州サンアントニオに移し、登場人物も少女から女へと成長していく。

   オリジナルタイトルとなった「女が叫ぶクリーク」には、メキシコとの国境の町で繰り広げられる女たちの暮らしが、細部に執拗にこだわるこの作家の表現法でリアルに描きだされ、ほかにも、ナイトクラブからの実況中継さながらの短編、メキシコ革命の英雄サパタの愛人を語りの主人公に据えて、時間、空間の軸を軽やかに移動しながら進める「サパタの目」など、作品はバラエティーに富んでいる。

   ラテン系社会では今もマチスモ(男性優位主義)が根強く、悲惨なことも多い暮らしのなかで、どの作品からも、愛することを手放さずに、前向きに必死に生きる女たちの、ホットでパワフルな日常がビンビン伝わってきて勇気づけられる。

   とにかく、この作家の転がるような調子の語りの文体には、思わず乗せられてしまうからおもしろい。シスネロスには詩集も2冊あって、これもなかなかいいのでおすすめ。『Loose Woman』はヘビーな愛の詩が多くて泣かせる。(森 望)