見よ、このオープニングの妙。これこそ司城志朗だ！
内容紹介にあるような理不尽な状況に主人公をほうり込む。いったい何が起こっているのか。読者も主人公と一緒に混乱に巻き込まれる。うまいなぁ。さすがだなぁ。
本書ではその理不尽な状況の謎は早々に解明され、それからは男の孤独な闘いがクローズアップされていく。文体も意識しているのだろう、かなりハードボイルドタッチなのだが、ラストはやはりミステリとしてのタネ明しで終わる。
私の好みとしてはこのタネ明しが邪魔。なんかとってつけたような謎解きで、それまでのキリキリと締め付けられるようなサスペンスがいきなりトーンダウンする。ミステリにこだわっているのはわかるんだけど、ちょっともったいない気がしてしまう。
とはいえ、中盤まではメチャクチャ面白いんで、面倒くさいことを考えなければひたすら楽しめる作品であることに間違いない。