司城志朗の特色は何と言ってもオープニングの不可思議さにあると思う。「いったい何が起こっているのか?」といったオープニングからたたみかけるような展開を得意としていると思っていたが、本書は意外にもストレートなミステリだった。ハードボイルドと紹介されているようだが、決してハードボイルドではないので、勘違いなさらぬよう。どちらかというと、社会派ミステリの枠から踏み出していないと思うのだが、どうか。
ただおなじみの読みやすさは健在なので、サクサクいける。サスペンス度も十分で読み出したらやめられない。……が、私が司城志朗に求めているのはこの程度の作品ではない、ということで多少辛目の評価になった。
直接内容には関係ないことだが、携帯電話の着信履歴で返信できることを知らなかったり、プリウスがガソリンと太陽電池(!)で走るなどと書かれていたりなぜか些細なことが気になった(これは編集の段階で誰かが気がつくべきでしょう)。